ノンフィクションライター・小野一光氏が、島根女子大生バラバラ殺人事件の「その後」を追う。
2009年11月に島根県浜田市に住む島根県立大学1年生、Aさん(当時19)の切断された遺体が、広島県の臥龍山で発見された「島根女子大生バラバラ殺人事件」。この事件で島根・広島県警による合同捜査本部は、犯行から7年後の16年12月20日に、島根県益田市の会社員・矢野富栄(よしはる=死亡時33)を犯人として書類送検した。その結果、被疑者死亡で不起訴との結末で、捜査は終結したのだった。
書類送検時に開かれた、島根県警捜査第一課長による記者会見では、捜査上の秘密として明かされなかったが、捜査関係者への取材により、矢野が被疑者として浮かび上がってきた状況が、徐々に明らかになった。
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被疑者として浮上した経緯
島根県警担当記者は言う。
「約40万件といわれるNシステム(自動車ナンバー自動読取装置)の記録を解析していたひとりの捜査員が、Aさんが行方不明になった時期の前後から、浜田市に頻繁に行き来する車両があることに気付いたのです。そこで調べを進めると、山口県下関市の住宅設備会社で働いていた矢野富栄に辿り着いた。事件から7年後のことです」
矢野についての捜査を進めるなかで、彼には性犯罪の前科があることが判明する。当時28歳であった04年8月に、彼は東京都杉並区の路上で、15分の間に連続して2人の女性を刃物で脅して押し倒しており、その半年前にも福岡県北九州市で、通行中の女性に刃物を突き付けて体を触るなどの事件を起こしていたのだ。この3件の強制わいせつ事件で、懲役3年6カ月の実刑判決を受けた矢野は、刑務所に服役した過去があった。
そんな矢野だが、Aさんの遺体が発見された2日後の09年11月8日に、山口県内の中国自動車道で、自身が運転する車両による交通事故を起こし、同乗していた母親ともども死亡していた。
前出の島根県警担当記者は明かす。
「矢野が死亡しているため、自殺か事故かの判断はできませんが、捜査員の多くは、早期に遺体が発見されたことに動揺しての、母親を巻き込んだ自殺だと考えています。ちなみに矢野は、Aさんの遺体の一部が発見された11月6日の夜、下関市にある本社に電話をかけて、『明日から2日間、代休を取っていいですか?』と尋ね、休みを取っていました。周囲には父親の墓参りに行くと告げていたようですが、父親の墓は実家の近くにあり、中国道を使う場所ではない。そうしたことなどから、彼が嘘をついていたことは明らかです」
