数々の名曲を残し、2013年に亡くなった大滝詠一。今月に開催されるMUSIC AWARDS JAPAN 2026では、日本の音楽業界に多大な貢献をしたとして、トリビュート公演も行われる。

 そんな大滝の仕事場に3日3晩泊まり込んで行われたロングインタビューを書籍化した『幸せな結末 大滝詠一ができるまで』の著者、音楽評論家の萩原健太氏が、「文藝春秋」6月号に寄稿した。その冒頭を紹介します。

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車載オーディオ機材の改造も半端ない

 アメ車は音がいい。そう教えてくれたのは故・大滝詠一師匠だ。ぼくにとって大滝さんは公私にわたるメンター。生前、本当に多くのことを教えてもらった。その一部を先日、『幸せな結末 大滝詠一ができるまで』という本にあれこれ綴ったのだが。書き切れなかった教えもまだたくさん。そのうちのひとつがこれだ。アメ車、つまり米国製の自動車は音がいい、と。

「何にでも想像を絶する勢いで凝りまくる」大滝氏だけに、車載オーディオ機材の改造も半端なかったという Ⓒ文藝春秋

 いや、別にエンジン音がいいとか、そういう話ではなく。車内で聞く音楽の音質。これが最高だということ。アメ車で聞く音楽はAMラジオだろうがカセットテープだろうが本当にいい音で鳴ってくれる。埋め込みスピーカーが頑強なボディに響きまくり迫力満点。ロックンロールの国の乗り物だな、と思い知る。

 もちろんすべてのアメ車の音がいいわけではないだろう。が、少なくともある時期、大滝さんが乗っていたアメ車。すごかった。バカみたいにいい音だった。本格的録音スタジオ並み。もともと音がいいアメ車ではあるが、何にでも想像を絶する勢いで凝りまくる大滝さんだけに車載オーディオ機材の改造も半端ない。車内の電源を安定させるパワー・レギュレーターを搭載。高性能アンプを接続しノート・パソコンから高音質デジタル音源を改良スピーカーへと流し込む。音質も音圧も圧倒的だった。

萩原健太氏 写真=本人提供

 あれは確か2001年暮れ。食事をご一緒した際、食後の歓談を長々、深夜まで楽しんでいたところ、やがて話題は大滝さんが当時、選曲・監修中だった小林旭のベストCDの件に。大滝さん自らリマスター(音質の最終調整)作業を終えたタイミングだったこともあり大いに盛り上がった。

「いい音に仕上がったよ。我ながら満足だ」

「わー、それじゃ今度聞かせてください」

「いや、今聞こう。車で。家まで送ってやる。後ろでゆっくり聞いていけ」

 と、半ば強引に招き入れられた大滝さんの愛車。後部座席でゆっくりとか言うけれど、大滝号の場合、高品質オーディオ用の極太ケーブルが床面を這い回り、足の踏み場もなし。座席も大半を機材が占めており、とてもゆっくり乗れる状況じゃない。

※この記事の全文(1500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年6月号に掲載されています(萩原健太「大滝詠一と小林旭」)。

文藝春秋

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大滝詠一と小林旭

幸せな結末 大滝詠一ができるまで

萩原 健太

文藝春秋

2026年3月12日 発売

出典元

文藝春秋

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