――AIに失敗から学ばせて、自己改善させているわけですね。

牛尾 その通りです。AIエージェント自身が間違いに気づき、修正していく「失敗の自動化」は、バイブコーディングの重要テクニックです。TDDでコーディングすると、必要なプロセスをはぶく「ズル」ができませんから、実装したあとにアプリが動かない、といったことを多くのケースで避けることができます。

 TDD自体はエンジニアの世界で昔からある手法ですが、これをバイブコーディングに応用すると、びっくりするほどAIの性能を引き出せるんです。

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――小さく失敗して学ばせるって、まるで人間のマネジメントにも通じる話ですね。

牛尾 そうかもしれませんね。人間も失敗するなかで学習しますから。そもそもマネージャは、部下の振る舞いから学ぶ必要があると思うんですね。AIという部下は、時々、嘘をつくし、やってない作業をさもやったかのように報告してしまう――その特性を見抜いたうえで、そうさせないための仕組みをマネジメントすることが大切です。

誰もが失敗をする ©AFLO

 そうやってAIとの共同作業を積み重ねていくなかで、これはうまくいったな、これは適切な指示とアウトプットだったなという成功体験がでてきます。それをSkillsにするのです。

 詳しくは本に書きましたが、「この会話履歴を参照して、〇〇のワークフローを実行するSkillsを作成してください」と指示を出せば、いつでも呼び出せるSkillsにしてくれます。これが「うまくいったことを資産化する」技術です。まわりの同僚たちを見ていても、このSkillsの使い方が非常にうまい。

AIと「固有の資産」を積み上げていく

――自分の仕事に必要な、固有のワークフローを、どんどん効率化していけるわけですね。

牛尾 そうです。LLMは世界のあらゆることを学習しているわけで、知識量は一人の人間より何十倍もあります。でも博識な彼らも知らないことがあって、それはAIを開発しているOpenAIやAnthropicも分からないこと――つまり「インターネットで見つからない情報」です。

 誰かの頭の中に入っているオリジナルの知見や暗黙知、ローカルのドライブにだけある社外秘の情報などはAIが知りようもない。だから、そういう情報をAIに与えてあげないと、意図を察して効率的に動けるはずがない。部下としてのAIは、凄まじく優秀だけれども、業務は何も知らない新人です。ふわっとした指示ばかりでは、いつまでたってもAIのパフォーマンスは上がりません。

 自分の頭の中に入っている仕事の経験知を言語化して資産にしていくと、彼らはそこから学んで自律的に動くようになります。エージェントに2回説明しているなと気づいたら、すぐファイルに書いておきましょう。そうすれば次からは参照してくれます。よいワークフローがあったらすかさずSkillsやスラッシュコマンドにしましょう。

 そうやってあなたとAIとのあいだに固有の資産が積み重なっていくと、唯一無二のパートナーシップが誕生します。あなたの仕事にぴったりと伴走してくれる、最高のAIエージェントが育てられるわけです。