児童虐待の対応件数は2024年度時点で22万件を超えた。統計開始以来、初めて減少に転じたものの、過去最多だった2023年度に次いで2番目に多く高止まりしている状況だ。また、日本では子どもの9人に1人が貧困状態にあるとされ、人知れず苦しい生活を送っていることも多い。

 そうした貧困家庭など困難に直面している子どもたちと、その支援にフォーカスした書籍『大人は気づいてくれない 貧困脱出への伴走型支援』(岩波書店)が発売された。今回は同書から一部抜粋し、1歳で両親が離婚し、以降は父と2人暮らしを続けてきた女性の「理奈さん」のケースをお届けする。なお本文中の人名は全て仮名。

画像はイメージ ©yamasan/イメージマート

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1歳で両親が離婚、父から「金食い虫」となじられ続けた

 初めて自宅の電気がつかなくなったのは木下理奈さんが小5の時だ。父親がぼそっと話した。

「電気、止められちゃったから」

 20代になった理奈さんが「でも、葬式用のろうそくがたくさんあって、夜は火を付けて過ごしました」と振り返った。埼玉県の駅ビル内にあるファミリーレストランの片隅。話しぶりはあっけらかんとしている。一軒家の自宅では、やがてガスも水道も止まった。幸いにも、まきストーブがあり、父が近所でくんだ水を何度もやかんで沸かして風呂に入った。服は洗濯板で洗った。そんな生活が続いた。

「その後も同じようなことがありました」

 埼玉県で生まれ、1歳で両親が離婚。父は幼い理奈さんを連れて東北地方の実家に戻り、建築会社に勤めたが、自室に引きこもりがちだった。祖父母の死後、児童虐待のネグレクト(育児放棄)の状態が続いた。父は仕事に行く日もあったが、よくパチンコ店に向かい、借金を重ねた。

「夜、その時に付き合っていた彼女の家に行くことも多かった。一人でお留守番をしました」

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 そんな夜は食パンを1枚だけ与えられ、そのまま食べた。頼みの綱は給食だが、給食費をもらう時はいつもなじられた。

「金食い虫だな」

 父は家ではほぼ何もせず、理奈さんは大人の代わりに日常的に家事をする「ヤングケアラー」になった。ただ、発達障害があって、父が求める水準の家事は難しかった。