児童虐待の対応件数は2024年度時点で22万件を超えた。統計開始以来、初めて減少に転じたものの、過去最多だった2023年度に次いで2番目に多く高止まりしている状況だ。また、日本では子どもの9人に1人が貧困状態にあるとされ、人知れず苦しい生活を送っていることも多い。

 そうした貧困家庭など困難に直面している子どもたちと、その支援にフォーカスした書籍『大人は気づいてくれない 貧困脱出への伴走型支援』(岩波書店)が発売された。今回は同書から一部抜粋し、1歳で両親が離婚したのちヤングケアラー状態で父と同居していた女性「理奈さん」のケースをお届けする。なお本文中の人名は全て仮名。

画像はイメージ ©yamasan/イメージマート

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高校卒業前に「ほぼホームレス状態」となってしまった

「1週間が限界だ」

 高校生の理奈さんが東北地方の実家に戻ると、父が告げた。娘との同居を嫌がっていた。埼玉県の親類宅を追い出され、今更帰れないし、交通費もない。

「高校は卒業したいけど、中退するしかないか……」

 諦めかけた時、友人が「戻るなら夜行バス代を出す」と連絡をくれた。アスポートの現場責任者の大森徹さんと、担当支援員だった小川敬子さんは理奈さんから電話で事情を聴き、受け入れ準備を始めた。大森さんは「あの時、彼女はまるでホームレス状態でした」と話す。

 学習支援をするにも基盤の住居が必要だ。生きるため生活保護も。理奈さんが振り返る。

「アスポートに懸けるしかありませんでした」

 カランカラン……。マンションの1階にある無料塾の入り口で、喫茶店のようなドアベルが鳴った。子どもが来たらすぐ気づくために付けてある。机が並ぶ教室に入った理奈さんはやつれていた。大森さんが迎える。「大丈夫?」。理奈さんは力なくほほえんだ。大森さんが語る。

「緊急事態をしのごうと、市役所の生活保護の担当課に連れて行きました」