この号を読者が手に取るころには、最終話を迎えた番組も多いはずで、まずは春ドラマの雑感から。
作品の質と娯楽性、スピード感を併せ持った『銀河の一票』が断トツ、ぶっちぎりで文句なしだ。強力な選挙参謀(岩谷健司)が現れ、黒木華と野呂佳代を支えるあたりは王道の展開で観る者を惹きつける。
さらに以前からチラと映される白杖の背景も明かされ、最悪の暴露系ユーチューバー(渡邊圭祐)の哀しい過去と相まって、物語のギアは一段と加速された。
絶大な権力を持つ与党幹事長で、黒木華の父でもある非情な政治家を演じるのは坂東彌十郎で、春ドラマの陰の主役は彼かもね。
なにしろ朝ドラ『風、薫る』では明治初年では珍しい舶来品店の主人でヒロインたちを助け、『夫婦別姓刑事』でも小心者にして人情家の警察署長を演じ、さすが彌十郎さん、三役を見事に演じ切っている。
他では、永作博美と松山ケンイチが共演する『時すでにおスシ!?』かな。軽く笑えて、しんみり。五十歳になって子育ても終え、アタシ何しよう。そんな戸惑いを、永作さん、いい感じで演じてる。
そしてそして、松山ケンイチを観ていると、楽しくってね。前期の『テミスの不確かな法廷』では、発達障害を抱えた誠実な裁判官を演じ、冤罪と対峙する演技は文句なしだった。
今作では、それとは真逆な脱力系キャラを見事に演じ切り、凄いよ松ケン。何しろ第一話は「イクラなんでもな出会い」ですからね。そんな軽いドラマでも迫力満点の顔で突っ走る。
永作博美が親友の有働由美子の勧めで入学した“鮨アカデミー”の講師が松ケン氏である。永作博美が勤務するスーパーでもひと際その挙動が目を惹き、とりわけ鮮魚コーナーでの真剣を通り過ぎた特異な眼差しから、若い店員から“さかな組長”と呼ばれていた。
アカデミーでの“イクラなんでも”な出会いから、ドラマは動きだす。さかな組長の本名は大江戸海弥。これもあんまりな名だ。
海弥はともかく寿司をにぎることひと筋の職人だ。そんな寿司職人気質が災いして、自分の店を喪った過去もある。片や、息子(中沢元紀)が社会人となり、生きる意味を見失った女性だ。激し過ぎる寿司愛ゆえに居場所を失った男が、またイチからやり直そうというときに出会い、まだまだ自分たちは何事をするにも「時すでに遅し」ではないという気になり、視聴者まで巻きこむドラマだ。
松ケンが永作博美を「水族館へ行きませんか」と、あのド迫力の顔で誘って、これはもう幸せな結末(ハッピーエンド)しかないかと思ったが、いや、鼻にツーンとくるような哀感ただよう結末がある気もして、彼の目から流れる大粒の涙も見てみたいな。
『時すでにおスシ!?』
TBS 火 22:00~
https://www.tbs.co.jp/tokisushi_tbs/



