「知らないねえ」
オープニングで駅の前に立った春日俊彰は言う。『オードリー春日の知らない街で自腹せんべろ』で訪れるのは、東大和市駅、四ツ木駅、弘明寺駅など、基本的には春日が行ったことのない馴染みのない街。そこで「せんべろ」=1000円でベロベロに酔えるような飲食ができる店を探す番組だ。だが、何しろ「お金を使わない」超節約家で有名な春日。たとえ1000円であっても、「自腹」というからには妥協しない。いかに時間がかかろうが、少しでも安いもの・お得なものを求め吟味に吟味を重ねる。気心の知れたスタッフから、それに強めにツッコまれたりもするが、春日はまったく動じない。そもそも「私ですけど」と突然店に入っていき、メニューを見せてもらった後、何も注文しないまま、また来るかもしれないし、来ないかもしれないと店を出ていくのだから、テレビの企画とはいえ、強心臓の持ち主である春日でしかできない企画だろう。鬼門は「お通し代」。それがあるかないかで1000円以内に収まるかが左右される。今はもう慣れたもので先に「お通しありますか」「メニューは税込みですか」などと確認している。
春日は番組が始まる前から、BS好きを公言し、いつか番組を持ちたいと語っていた。その夢が叶い2024年12月にパイロット版が放送されると、翌年4月に早くもレギュラー化。現在はシーズン3が放送されている。“BSっぽさ”にこだわり、いかにも地上波テレビ的なわかりやすい演出をしないように春日が要求している様も面白い。「厳山厳男」「とりのあえず保の留でやす」「貴の重 情の報 ありがた男」といったテロップが象徴的だ。通常テロップは視聴者にわかりやすく伝えるために使われるが、いわゆる「春日語」で書かれているから、“一見(いちげん)さん”には意味不明。その“狭さ”がBS特有の“ホーム”のような心地よさを生んでいる。もちろん春日語は、テロップだけでなく番組中の発言でもほとんど説明なく使われている。
今回春日が訪れたのは、東急東横線の白楽。この番組はおそらく2本撮りで、それぞれ昼スタートと夕方スタートがあり今回は後者。この場合、ラストオーダーの時間との勝負という側面がある。そんな中、飲み屋街や商店街に高確率でいるのが世話焼きおじさん。この日は「酒・肴 あべちゃん」の店主が、「店紹介しようか」と自分の店そっちのけで、時間も気にせずグイグイと春日を先導していく。困惑しつつもそれに身を任せるのが春日。時に春日の変なこだわりが発動したり、時に時間配分を大幅にミスしたりするのも、生々しくて面白い。まさに「リアルせんべろドキュメンタリー」。地上波とはちょっと違う「春日」は“ちょうどいい”。
『オードリー春日の知らない街で自腹せんべろ』
BSテレ東 土 22:00~
https://www.bs-tvtokyo.co.jp/kasuga_senbero/



