さすが向田邦子賞を最年少で昨年、受賞しただけあって、兵藤るりさん、ヒット作、連発だ。
真夜中の都会を走るタクシー運転手を古川琴音が演じる。そのミステリアスな表情を予告編で観た瞬間、傑作の予感があった。
古川琴音が目当てで狙いをつけたドラマです。そうしたら、脚本はなんと前回で取り上げた『時すでにおスシ!?』の兵藤るりで、びっくりしたなモォーだ。
花の蘭に、象の子どもと書いて、あららぎ・しょうこ。深夜専門のタクシードライバーだ。ショート・ボブに前髪パツン。私は苦手なんだよ。あの髪型が似合う人って滅多にいないの。すごく綺麗な顔だちしてるか、一般人と俳優とを問わず、際立って個性的な内面を持ってないと駄目。
その点、象子を演じる古川琴音はピッタリ。面倒くさい客が乗車しても、無表情に、かつ簡潔に客と対応する。行き先と時間を訊いて、目的地に着けば料金を告げる。ウザイ奴も多くてさ。女同士だと友情の確認や価値観の押しつけとかあり、あげく「運転手さん、どう思いますかぁ?」と振ってくる。
そんなとき象子は無表情で「あたしは別に」と応じるだけ。でも面倒臭い客って不快な顔はしない。なんだか客の口調とかヤバくなったら、バックミラー越しに一瞬チェックする。
無駄口は叩かず、合理性重視で客を安全に目的地まで届ける象子を気に入って指名する客もいる。
秘密や過去を抱える客もいるが、象子にも伯母の蘭弥生(やよい)(和久井映見)くらいしか知らない事柄がある。象子の母は、彼女を幼いときに捨てて、家を出たままだ。弥生は芸能プロを経営し、テレビ局からの帰りには象子を指名する。
象子はもう何十日かで三十歳になる。それまでに何をやりたいか。彼女が夜勤を終え、洗車も済ませた後に早朝の食事をとる喫茶店のマスター源さん(竹中直人)は「大掃除をしたら」と勧める。塵ひとつない状態でなく、適度にホコリを残しておくくらいでね。
象子はどうも絵を描く才能があるようだが、描いた後は疲れ果てグッタリ。鶴も好きなようだ。その話を伯母の事務所の売れっ子タレント麗華(伊藤万理華)にしたら、彼女が鶴を飼いたいと言いだし、特別天然記念物の鶴は動物園を作らないと飼えないと知った麗華は俄然、仕事に熱を入れて、伯母を驚かす。
深夜の首都高や下町の路地を走る象子の運転姿もクールで、背後に流れるAOR風の曲にぴったり。しかし彼女自身もわからない、三十歳をまたいで成し遂げたい事って見つかるかな。
ともかく古川琴音の存在感が絶品。そして和久井映見、伊藤万理華も、さらに常連客の中村蒼もいい味だしてるなあ。
『ミッドナイトタクシー』
NHK総合 月~木 22:45~
https://www.nhk.jp/g/ts/34383YW231/



