サッカーって、私はほとんど何も知りません。四年に一度、W杯のときだけチラ見するだけ。

 そんな私が今年のW杯を楽しんだ。佐野海舟が先制ゴールを決めたブラジル戦は、一瞬夢をみた。でも、そのことは多くのファンが熱く詳しく語っている。

 私が画面に集中して声援を送ったのは、W杯初出場のカーボベルデだ。初戦で格上スペインに二十七本のシュートを浴びても、GKボジニャが神技セーブでドローに。勝ち点一を手にしたとき、世界中がアフリカ西岸沖の島国に熱狂した。

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©JMPA

 凄いな、夢みてるみたいだった。小さい国で人口は約六十万人。私がこの国をちゃんと知ったのは、二十五年前だったか。セザリア・エヴォラという女性歌手の来日公演を観て、圧倒されたときだ。

 六十代半ばの“裸足のディーヴァ”の歌唱力は胸に静かに深く沁みた。旧宗主国ポルトガルのファドとも共通する郷愁と哀感あふれる歌声でね。かといって感傷過多で類型的な大衆歌謡じゃなく、なんともいえない品性があるの。

 当時の日本では、やたらと裸足の歌姫が誕生し、私は食傷気味で、うんざりしていた。だけど彼女の裸足は、客受けを狙わず、飽くまで自然体。この前後にグラミー賞も受賞した。

 以来、気になっていた島国がW杯に出場、前回優勝のアルゼンチン戦では、あと一歩まで迫った。

『大下容子ワイド!スクランブル』も度々特集を組み、島に住む関西弁のファンキーな、ヒップホップダンサーを取り上げた。こんな島に日本人が。

 あるときは、島の国民食カチューパのレシピを参考に、スタジオでゲストの吉永みち子、末延吉正のお二人が試食をした。トウモロコシと豆を煮込み、魚や野菜、肉を具材にした国民食だという。ミネストローネみたい、と吉永さん。

 やはりポルトガル領だったマカオの食堂で、タラやイワシなど魚介類をつかったコロッケやスープが、日本人の舌には合って満足したことを思いだした。

 日本のマグロ漁船で賑わっていた時代、大漁だと「最高だよ!」と叫んだのを聞き、島民も『サイコーダヨ』という曲を歌い人気となった。しかし二番の歌詞は「サイテーだよ」だと指摘した研究者の発言を読み、島民と何か軋轢があったかもしれないと思う。

 北杜夫『どくとるマンボウ航海記』は五〇年代末に水産庁の漁業調査船の船医となった北さんの、ユーモアと知性あふれる大ベストセラーだ。(たしか、あの本に)と思い何十年ぶりかに読んだらあった。「私たちはヴェルデ岬諸島の同国からカナリア諸島にかけ十六回の漁をしたが」。北杜夫、セザリア・エヴォラ。十二歳のときから深い縁があった島国だったのか。

『FIFAワールドカップ2026 アルゼンチン×カーボベルデ』
日本テレビ 特別番組
https://www.ntv.co.jp/FIFAworldcup2026/

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