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出生前診断の“誤診”で産まれたダウン症児 「産む」という選択を考える

著者は語る 『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』(河合香織 著)

日本では胎児の障害を理由にした中絶は認められていない

 この事件の顛末を軸にして、日本の中絶と優生思想の問題へと本書は深く入り込んでいく。実は日本では法律で中絶は経済的、身体的理由などに限られ、胎児の障害を理由にした中絶は認められていない。法律の狭間で両親たちは選択を迫られているのだという。

「2018年3月に、新型出生前診断(NIPT)を日本産科婦人科学会が一般診療化する方針を発表しました。NIPTは羊水検査と比べて血液検査だけでよく、簡単で安全だとメディアなどで謳われています。全染色体の検査を宣伝するクリニックもあります。その流れのなかで、どんな子であっても産みたいという気持ちをどうすれば尊重できるのか。私達は自分で選択したつもりで、本当は選択させられていることもあるのかもしれません」

かわいかおり/1974年生まれ。ノンフィクション作家。神戸市外国語大学卒。2004年『セックスボランティア』でデビュー。09年『ウスケボーイズ――日本ワインの革命児たち』(小学館ノンフィクション大賞)は渡辺大主演で映画化され今秋公開される。

 河合さんは旧優生保護法で不妊手術を強制された女性や、無脳症児をあえて生んだ母、ダウン症の当事者などにも話を聴き丁寧に生の声を集めた。

「取材を重ねて、自分自身にある思い込みから自由になっていく感じがしました。これまで自分が書いてきた本でもそうですが、私は、自分の望む結論に読者を誘導したいわけではありません。本書でこの問題について深く考えるための材料を提供できたらと思っています」

『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』
あるダウン症児の死と訴訟を皮切りにして、出生と障害との関係を様々な当事者たちの声から描く。検査技術の向上で、出生前に胎児について多くのことが判るようになった。しかし、どこで中絶の線引きが行われるのか。目を逸らして生活しつつも、誰もが直面するかもしれない事実を、鋭く抉るノンフィクション。

選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子

河合 香織(著)

文藝春秋
2018年7月17日 発売

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