トランプ大統領との“蜜月関係”

 2016年2月、インファンティーノは第9代FIFA会長となる。その年の11月、ドナルド・トランプは大統領選に勝ち、翌2017年1月に第45代米国大統領(第1期)となった。以後、インファンティーノはトランプへのアプローチを始め、トランプの大統領第2期(2025年1月~)になると2人の緊密さはさらに目に付くようになった。

 トランプが大統領2期目に当選したばかりの2024年12月、FIFAは新たに設立した「FIFAクラブワールドカップ」の式典と抽選会をトランプの地元フロリダ州にて開催している。会場でトランプからのビデオメッセージを流したと思えば、娘のイヴァンカ・トランプが登壇し、抽選を行った。これには多くのサッカーファンが驚き、違和感を持ったと報じられている。さらに翌2025年7月、FIFAはニューヨーク市内のトランプ・タワーに新事務所を開設。

抽選式に登場したイヴァンカ・トランプ(イヴァンカ・トランプのインスタグラムより)

 2025年12月には、インファンティーノ会長は「FIFA平和賞」なるものを新たに作り、トランプ大統領に授与している。今回のW杯の抽選会はワシントンD.C.で行われ、そこに出席したトランプにトロフィーが贈られたのだった。

ADVERTISEMENT

 トランプはノーベル平和賞を渇望しながらも毎年、受賞を逃しており、それに対する怒りの発言やSNSへのポストはよく知られている。ゆえにFIFA平和賞はインファンティーノがトランプの機嫌を取るためのものだとされた。

 受賞の約3カ月後となる今年2月に米国がイスラエルと共にイランへの攻撃を開始したこともあり、ノルウェー・サッカー協会の会長であり、UEFA(欧州サッカー連盟)執行委員も務めるリーセ・クラヴェネスは、FIFAは政治的中立を保つべきであり、FIFA平和賞を廃止せよと発言している。

「私だってその金額は払わない」

トランプ大統領との蜜月ぶりが批判されている(FIFAインファンティーノ会長のインスタグラムより)

 このようにインファンティーノ会長から至れり尽くせりの歓待を受けているトランプだが、インファンティーノがチケットの価格について厳しく批判され、「ホットドッグとコーラ」の苦しいジョークを発した日、トランプは擁護しなかった。

 米国の初戦となる6月12日、ロサンゼルスでの対パラグアイ戦のチケットは、一般席で最高額が約2700ドル(=約43万円)で、2022年W杯決勝戦の最終価格を上回っている。最も安いチケットですら約1000ドル(=約16万円)であることについてメディアに質問された際、トランプは、こう答えている。

「正直なところ、私だってその金額は払わないだろう」

 トランプにとって1000ドルはポケットから簡単に出せる金額だ。しかし自身の支持層である労働者階級には手の出ない金額であり、つまりW杯が自分の支持率に貢献しないであろうことに苛立っているのかもしれない。なお、試合の4日前の段階でチケットが完売していないことが報じられている。

 さらに、海外のチケット購入者には「試合当日までにビザ発行が間に合うか」という懸念も――。(文中敬称略。#2につづく

次の記事に続く 「ボイコットするファンも」売れないチケット、ビザ問題、入国禁止…W杯・現地アメリカでささやかれる懸念