今年1月、建築家の山本理顕氏が隈研吾氏ら著名建築家を講演会で批判したことが大きな話題になった。山本氏は、東京の大規模再開発は「地域のコミュニティーを壊している」状態と批判したのだ。

 そんな二人の対談が実現。日本の都市開発が抱える問題とは何か。建築界の巨匠2人が、本音で激突した。隈氏によれば、金融資本主義型の都市政策が加速したのは、リーマンショック以後だという。

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 隈 リーマンショックで人々は「大企業を潰してしまうと、経済が破綻し世界中が大混乱する」ことを学んだ。それが、巨大な企業に一層仕事を集約させることになり、大企業はますます強大で決して死なないサイボーグのような存在になりました。加えて、震災で自然災害の恐ろしさを実感したことで、国土や建築にお金をかけることが一種の「正義」となった。

隈研吾氏 ©文藝春秋

 この流れの中で、安倍晋三政権は成長戦略の柱として都市部など特定の地域を「国家戦略特別区域」に設定しました。容積率の緩和など特例を認めることで、その区域を国際的なビジネスの拠点にしようとマネーを呼び込んだ。以来、日本の社会経済を動かすエンジンとなっています。

 こうして、金融資本主義型の都市政策が、復興を優先する日本では国の後押しや制度の支援をバックに「ターボ」がついた状態で加速していったのです。

日本は下手したら3倍

 山本 もともと、リーマンショックも住宅問題がきっかけでした。住宅はわかりやすく欲望を喚起するために浪費意欲と相性が良いのですが、今では極端なまでに「浪費型金融商品」になってしまいました。

批判が大きな話題をよんだ山本理顕氏 ©文藝春秋

 こうした傾向のために、住宅を買う人たちは、将来いくらで転売できるかということを第一に考えるようになってしまった。これは全く本末が転倒しています。

 家族が住宅に安心して住むことができるというのは、基本的人権だと私は思います。本来、国家の責任です。住宅に住むことによって初めて地域コミュニティーに参加し、安心して働くことができる。1996年にトルコで開かれた第2回国連人間居住会議での「イスタンブール宣言」には住宅は「住む権利」だと明記され、日本政府も調印しています。そこが破壊されてしまっているのです。今の日本の不景気の原因はそこにある。本来、国民の財産であるものを金融商品にして売りさばいてしまうというとんでもないことを、国が後押ししています。

 ゼネコンの変質も目に余ります。日本は建築家のノーベル賞とも言われるプリツカー賞を世界で最も多く獲得していますが、それを支えていたのは日本のゼネコンの高い技術力でした。そんなものづくりのプロが、今では「どれだけ投資したら、いくら儲かるか」という金融資本主義に巻き込まれて技術力も痩せ細っています。