遺言状はどうするか……弁護士へ相談に

 B藝春秋の法務部にKという友人がいる。僕の病気や生活のことをいろいろと心配してくれる優しい男で、先日も「医療費を稼ごう」と言って「ボートレース多摩川」に連れて行ってくれた。その結果、2人あわせて800円という巨額の利益を稼ぎ出したのだ。

 そんなK氏が「病気が進んだら自分でできないことも出て来るだろうから、早めに弁護士に相談しろ」という。

 そこで、K氏のよく知る弁護士のF先生に会いに行った。

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主治医から採血を受ける ©文藝春秋

 F先生とはK氏を交えて何度か新宿二丁目のおかまバーで飲んだ仲だ。

 F先生の事務所を訪ねたのはボートレースに行く数日前のことだった。

「遺産はどうしますか」

「遺産は残さず自分で使い切ります」

「まあそう言わずに、少しは残しておかないとアレだから、詳細を遺言状に書いておいてください」

「書くのは商売だから構わないが、遺言状を書くと原稿料とか印税はもらえますか」

「そんなの出ませんよ」

「じゃあ書き損だ」

「そうでもないですよ。遺産を渡したくない人がいるならそれを書いておくと、希望通りになる可能性があります」

「なるほど。それなら書きましょう。ところで弁護士費用はおいくらですか」

「まあオサダさんとのお付き合いだからお安くしておきますよ」

「じゃあこんどボートレースで儲けたら、儲けた分だけF先生に差し上げます」

 F弁護士は俄然張り切り出し、その報酬で家を新築すると言い出した。ボートレースでの利益が800円だったことは黙っておかねばなるまい。

 F弁護士からいくつかのアドバイスをもらった。

 銀行預金の口座はなるべく一本化しておく。保有株式は損が出ていないなら早めに現金化しておく。お墓はどうするのか、無いなら遺骨はどうしてほしいのか。散骨すると言ってもそこらへんに勝手に撒くわけにもいかないのでお金はかかるぞ。何より遺産を譲渡する相手と配分を決めてくれないと弁護士も動きようがない。最近おかまバーに行ってますか? えっ! 潰れちゃったんですか? 遺言状は「手書き」じゃないと認めてもらえません。だから自分で書けるうちに書いておく必要があるんです。遺言状のフォーマットがあるから送っておきますね。そうですか、あの店潰れちゃったんですか……。

 F弁護士が「心ここにあらず」になってしまったので、この日の打ち合わせはこれで終了。入院中はヒマだろうから、そのあいだに遺言状の下書きを作ってF弁護士に添削してもらおうと思っている。

※長田昭二氏の本記事全文(7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています。全文では、下記の内容についても触れられています。
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・「シモの世話」に備えて……前例なき包茎手術
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