“ヤクザの抗争の時代”を知らない少女たち

「歌舞伎町は怖い街」。そういうイメージがついていたのは戦後から昭和50~60年くらいだった。ヤクザの抗争が激化。酔っ払い同士の喧嘩もある。

 そんな街の中に立つのは並大抵の度胸ではあるまいと思ってしまうのだが、彼女らは立ち続ける。時代は移ろい、上記の事件や騒動など知らないから、というのが大きいのだろう。しかしそれでも「歌舞伎町は歌舞伎町」である。毎晩どこかで大なり小なりもめ事が起きている。そのもめ事に巻き込まれても良い、あるいは巻き込まれない自信があるのか。

 誰も守ってくれない(ケツ持ちがいないという意味で)彼女たちは、ハイリスクハイリターンの選択をした。ミドルリスクミドルリターンでは売掛けを払ったり、メン地下を推すことができない。その日、春を売った料金は全額自分の財布に入る。今、流行のショートカットの思想である。

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ショートカットの思想

 ショートカットの思想とは、トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)と言われている犯罪形態を思えば分かりやすい。バブル期の犯罪は、総会屋などのスキームで複雑化されていた。しかし現代の犯罪は、「金のある人間からとっちまえ」とSNSで集まった人間が個人の家に押し込み、強盗を働くようになった。複雑なスキームなどどこへやら、ショートカット化された犯罪だ。

 地道に金を稼ぐといった考えは「ウケない」のだ。立ちんぼの考え方もショートカットである。店など通さなくて良い。立っていれば客がつく。今ではヤクザが立ちんぼを管理することもなくなった。タガが外れたのである。タガが外れた彼女たちがタガが外れた歌舞伎町に集まってきた訳だ。

 この状況が良いとは決して思わない。けれど、ショートカット思想の流れは止まらないだろう。そしてタガが外れた状態も変わらない。

 歴史を顧みても、立ちんぼはなくならないだろう。クサいものに蓋をしても無駄だ。戦国時代から暗渠として脈々と流れてきている、人類最古と言われているこの「職種」は、もはや人類の歴史として定着しているのだ。

 立ちんぼの歴史、増加の原因、外国人立ちんぼの現状、ヤクザが明かす歌舞伎町の実態。

 その全貌は、『教養としての新宿・歌舞伎町』(朝日新書)で。

次の記事に続く 「親父をどこまで上げるかが本分」「心でつながっているから」…誰も憧れなくなった時代に、それでも彼らが“ヤクザ”を続ける理由