銀行口座も作れない、家も借りられない、車も買えない――。暴力団排除条例の徹底により、現代のヤクザは「飯が食えない」ほどの厳しい締め付けにあっている。それでもなぜ、彼らはヤクザを続けるのか。

  ここでは久田将義氏の著書『教養としての新宿・歌舞伎町』(朝日新書)の一部を抜粋、再編集したものを特別版[後編]として紹介する。

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ヤクザになったワケ

 暴排条例といった環境の変化が起こっても、決して半グレ・トクリュウの立場が上になったということはない。依然として繁華街の捕食者の頂点にはヤクザが君臨している。ただし条例のおかげでヤクザがキツイ思いをしているのも確かだ。

 ヤクザは今、何を感じているのか。歌舞伎町に事務所を置く、指定暴力団二次団体幹部二人にインタビューをした。揺れ動く現役ヤクザの本音を聞いた。

――ヤクザになったきっかけを教えてください。

E氏 ガキの頃は暴走族やっていましたね、中一くらいから。20代で歌舞伎町に来てヤクザになりました。当時はヤクザする気なかったんですけど、歌舞伎町に出て来て、若い人ともめたんですよ。それから親父(おやじ/親分)が出てきて話しているうちに「あ、この人は違うな」と思ったんです。そこから親父の盃(さかずき)もらって、という感じです。

――暴走族からヤクザへのルートは多いですがDさんは?

D氏 俺はちゃんとした家庭でしたね。暴走族はやったことがない。でも俺はガキの頃から素行があまり良くなくて。

写真はイメージ ©︎hiroyuki_nakai/イメージマート

好きじゃないとできないヤクザ

――お二人にとってヤクザをやる意味を教えてください。

D氏 俺んところは、普通の会社だからね。正業、持っていないとね。うちの親分が詐欺とかクスリとか嫌う人だから。ただ他組織のことは俺はいちいち言わない。俺のところの親分が嫌っているからそれに従っている。俺自身も、今日一日生きる金とヤクザができる銭さえあればそれ以上求めないから。それ以上求めると他人(ひと)様に迷惑をかけることになる。自分の信念を貫けるだけの心と銭があればそれで充分。ヤクザが好きだからね、俺は。ヤクザである自分が。それをやるには多少の銭は必要だけど。

――Eさんはいかがでしょう。

E氏 自分は親父(親分)が好きなんで、親父とおればいいんかなと。ある程度、生活なんかできなければだめですけど見栄張ろうと思えば、そういう付き合いもあるし。金は必要ですけど。だけど親分が好きなんで親分と一緒にいられればというのをこれからも続けるようにするだけですね。親と子の盃ですから。

D氏 心でつながっているからね。今の若い人たちは俺らをかっこいいと思っていない人が多いよね。職業として見ちゃっているから。俺らは「生き方」なんで。それがないとやっぱり(この稼業は)続かないんだね。給料が出る訳でもないし。大変だけどそれを我慢して「この人のために」とできるからヤクザやっている。ヤクザ、好きじゃなきゃできないよ。時間とられて稼げないとか、こんなことやっていたらずっと貧乏とか思っていたら一生ヤクザなんか続かない。自分で頑張って頑張って仕事見つけて、なおかつ兄貴、親分に尽くして。そういう世界だよね。