1972年(昭和47年)6月26日午前9時、東京・新橋の有名ホテルの一室で、37歳・女性歯科医の全裸遺体が発見された。
死因は窒息死。前夜20時ごろには隣室と真下の部屋の宿泊客が「助けて!」という女性の叫び声を聞いていたが、痴話喧嘩と思い込み通報しなかった。
次々と浮かんでは消える「容疑者」
捜査を進める警察は、被害者女性の体内に精液(血液型はO-非分泌型)が残っていたことから、顔見知りの犯行と断定。まず同行していた男性医師2人に疑いの目を向ける。しかし血液型も指紋も一致せず、容疑者から除外された。
次に浮かび上がったのは、九州歯科大学の2年先輩で3年前から不倫関係にあった歯科医だ。被害者が上京した24日夕方から25日朝方にかけて密会していたことが判明し、同行の医師2人には「親戚の家に行く」と嘘をついていた。痴情のもつれによる犯行が疑われたが、こちらも血液型と指紋が一致せず、捜査は振り出しに戻る。
開業医として成功し、夫が家事と育児を担うという当時としては珍しい夫婦の形を築いていた被害者。しかしその裏では、東京を訪れるたびに孔雀の羽の夜会服やつけまつげで着飾り、1人でダンスホールを遊び歩いていた。講習会で唯一の女性参加者として「女王様」と冷やかされていた彼女の華やかな交友関係は、事件を複雑な迷宮へと引き込んでいく。
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