現場で拍手が沸き起こったシーン

風間 信子の心情を投影するために、光と影の演出には細かく気をつかいました。原作でも、日陰に咲く花に視線を移し、その情景に自分を重ねる信子の描写がありますが、その情緒を大切に、撮影監督や照明技師と何度も話し合いながら、彼女の心象風景として映像を構築していきました。信子の見る幻想のシーンでは、水の中に入ったり草原を全力で走ってもらったりと、なかなかハードなシーンがあって、ひよりさんには頑張っていただきました。

©2026映画「モブ子の恋」製作委員会

桜田 草原のシーンの撮影は、今でも鮮明に覚えています。あのシーン、ワンカットごとに全部一発OKだったんですよね! 

風間 ええ。ひよりさんは本当に伸び伸びと、鮮やかに草原を走り抜けてくれた。撮影が終わった瞬間、現場にいた全員から大きな拍手が沸き起こった。撮影自体は中盤で、疲れが溜まっていた時期だったかもしれませんが、あの広大な草原を走り抜けたことで、チーム全員の視界が一気に開けた気がします。

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桜田 富士山が本当に綺麗に見える場所でしたね。人生でもう一度行きたい場所を聞かれたら、間違いなく「あの草原!」 と言えるくらい、私にとっても特別な場所になりました。

風間 水や光、自然というモチーフは、信子の内面を映像的に表現する上で欠かせない要素でした。モノローグに頼りすぎず、彼女の葛藤や精神世界をどう視覚化するか。一人の女の子がこれほどまでに壮大に悩み、そして前を向こうとしている。その姿を映画ならではの表現で届けたかった。

桜田 映画を観た人からは、信子がもうひとりの自分と対峙するシーンを「よかった」と言っていただけることが多いです。

風間 それは嬉しいですね。

©2026映画「モブ子の恋」製作委員会

桜田 2人の自分が向き合って、合わせ鏡のようになったり厳しい言葉を投げかけたり……演じていて、とても不思議な感覚になりました。

風間 信子を信子たらしめる「分身」との対話だと捉えていました。自分自身に向ける厳しさがあるからこそ、人に対しても臆病になってしまう。ひよりさんの表現によって、彼女の葛藤がより豊かに、そして切実に描けたと思っています。

前田涼子=スタイリング
徳永舞(BEAUTRIUM)=ヘアメイク

ブラウス:リリアン カラット
ワンピース:ココ ディール
その他:スタイリスト私物

かざま・ひろき 1991年、山形県出身。東北芸術工科大学卒。2019年『チア男子‼』で長編映画監督デビュー。主な監督作にドラマ『silent』『海のはじまり』、映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』(22年)『バジーノイズ』(24年)など。微細な感情を掬い取る繊細な演出が光る、気鋭の映像作家と評価されている。

さくらだ・ひより 2002年、千葉県出身。幼少期から活動し、ドラマ『明日、ママがいない』などで脚光を浴びる。主な出演作にドラマ『silent』、映画『バジーノイズ』『この夏の星を見る』(25年)など。透明感と確かな演技力を武器に、主演作の続く若手実力派俳優。2026年8月には出演作、劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~CAPITAL CRISIS』が公開予定。

INTRODUCTION

田村茜の同名人気漫画を、ドラマ『silent』や映画『バジーノイズ』の風間太樹監督が実写映画化。自分を背景の一部のような「脇役(モブ)」だと思い込み、他人が主役の世界を遠くから眺めて生きてきた大学生の田中信子が、バイト先の入江博基への恋をきっかけに、自らの殻を破り一歩踏み出す姿を繊細に描き出す。主演の桜田ひよりと木戸大聖が、控えめながらも懸命に生きる若者たちの心の機微を好演。誰しもが自分の人生の主人公になれることを優しく肯定する、瑞々しいラブストーリー。

 

STORY

20年間、自分を世界の片隅にいる「脇役」だと定義してきた大学生の田中信子(桜田ひより)。彼女はある日、バイト先のスーパーで働く入江博基(木戸大聖)が、足元の小さな花を避けてカートを操る優しい姿を目にし、人生で初めての恋に落ちる。自己主張が苦手な信子だが、入江への想いを力に、就職活動や対人関係で悩みながらも、少しずつ自分を変えようと奮闘する。一方、入江もまた彼女の静かな優しさに気づき始め……。

 

STAFF & CAST

原作:田村茜/監督:風間太樹/出演:桜田ひより、木戸大聖、早瀬憩、唐田えりか、草川拓弥、荒木飛羽、古舘寛治/2026年/日本/122分/配給:イオンエンターテイメント、東京テアトル/©2026映画「モブ子の恋」製作委員会

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