医師として優秀なだけでなく、性格も明るく人懐っこいため、同期の研修医みんなから「杉ちゃん」と呼ばれ慕われていた。自他ともに認める陰キャで集団行動が苦手な私を、同期との飲み会にわざわざ誘ってくれるのも杉ちゃんだった。

 初期研修の最後の半年ほどは、希望する科を自由に選べる選択期間だ。多くの研修医はこの期間を専攻しようと考えている診療科での研修に当て、後期研修へのスムーズな移行を目指す。

 私は「外科」を選択した。強い意志があったわけではなかったが、薬の力ではなく、自分の手で病気を治せることに魅力を感じたのだった。

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 杉ちゃんが選んだのは「循環器内科」だった。彼女は最初から「循環器内科」で働くという明確な意志を持ち、その目標に向かって日々を積み重ねていた。

彼女はほぼ毎日「夜中まで」病院にいた

 循環器内科は忙しさ、プレッシャーともにトップクラスの診療科だ。ほかの初期研修医が18時や19時に帰宅する中、杉ちゃんはほぼ毎日、夜中まで病院にいた。

写真はイメージ ©getty

 研修医のほとんどは指示のない限り休日に病院に行くことはない。ところが、彼女は自分の担当患者の責任を負うがごとく休みなく病院に足を運んだ。初期研修医でありながら、すでに医師としての責任感を背負っていたのだ。外科で暗中模索状態の私の耳にも「杉野はスゴイ」「もう一人前だ」という噂が入ってきた。