内縁の夫を裏切り、不倫相手に入り浸るようになった40歳のスナックママ。激高した夫に絞殺された彼女の遺体は、服を剥ぎ取られ、養豚場跡地で草刈り機によってバラバラに解体されていた。平成10年、三重県で起きた殺人事件の発端となった「許されざる恋」とは何だったのか。

「私はアンタと同じ空気を吸うのも嫌なんや」——男の中で何かが壊れた瞬間

 スナックを経営する女(当時40)は、二度の離婚を経て、10歳年上の男(同50)と内縁関係にあった。男は女のスナック開業を手伝い、4人の子どもたちとも向き合い、「夫」としての地位をすっかり築いていた。長男は何でも相談するようになり、女の父親が起こした交通事故のトラブルも男が解決に動いた。

 ところが女は、地元のエリートサラリーマン(同40)と関係を持ち、わずか1カ月で男女の仲になった。不倫相手に内縁の夫の存在を打ち明けたとき、女はこう言い放った。

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「あの人にはもう愛情はない。あなたを愛している」

写真はイメージ ©getty

 不倫相手の男の離婚が成立し、2人の結束が強まる一方、内縁の夫は女の家族のためだけに家事をこなす日々を送っていた。そしてある日、スナックで二人きりになった瞬間、女は男にこう言い放つ。「私はアンタと同じ空気を吸うのも嫌なんや。アンタなんか最低。大嫌い」。

 そのセリフを聞いたとき、男の中で「何か」が壊れた。

「あの世で仲良くしろ!」

 男は「これで終わりにするしかない!」と叫びながら女に馬乗りになり、その細い首を絞め続けた。「不倫相手とはあの世で会わせてやる。あの世で仲良くすればいいじゃないか!」。女がぐったりと絶命すると、男は遺体を車のトランクに運び込んだ。数日後、異臭が気になり始めると、男は遺体を山中の養豚場跡地へ運んだ。全裸にされた遺体は、蝋人形のように真っ白だったという。

 男は準備していた草刈り機を起動させた。肉と骨が断ち切られる生々しい音と、血の臭いを嗅ぎつけて集まってきたカラスの鳴き声だけが、静かな山中に響き渡った。切断された各部位は新聞紙でくるまれ、ポリ袋に厳重に詰められた。男はその後も女の家族と同居を続け、「妻に逃げられた哀れな夫」を演じきった。

 事件から9年後、別件の事情聴取をきっかけに男は自供。59歳になっていた男は泣き崩れながらこう語った。「9年間、苦しかった……。いつか言わなければならないと思っていた」。

 法廷で関係者を驚かせたのは、被害者の長男の言葉だった。「あの人は加害者であると同時に、母やその浮気相手の被害者でもあると思います。事件が明らかになっても、私にはあの人を責めることができません」——。

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