6月16日、臨床検査薬、受託臨床検査大手のH.U.グループホールディングスで異常事態が起きた。CEOだった竹内成和氏以下CXO4人全員が株主総会後に一斉退任したのだ。
発端は、米国の資産運用会社GMOによる株主提案に、社外取締役が過剰反応したことだった。ある日、H.U.の発行済み株式を9.35%まで買い進めたGMOが、経営改革についての「提案書」を送りつけてくると……。ジャーナリスト・大西康之氏のレポート「株主資本主義の末路 H.U.最高責任者が全員辞任!」(文藝春秋7月号)から一部紹介します。
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社外取締役らの動揺
その中身はかなり乱暴なものだった。
「IVDの事業責任者である石川剛生氏とLTSの事業責任者である松本誠氏を取締役候補にし、石川氏を次期社長に。竹内氏と(執行役常務でCFOの)北村直樹氏は取締役を退任せよ」
「どう返答する」
H.U.の取締役会は大騒ぎになった。7人の社外取締役の大半はアクティビストと対峙した経験に乏しく、慌てたのだ。竹内氏は「ファンドには制限時間がある。H.U.の株を買ってから3年半経っても事業売却などに応じなかったため、焦れて高めのボールを投げてきたのだろう」と冷静に受け取り、「返事をする必要はない」と社外取締役たちに説いた。
株主総会で取締役の再任を否決するのは過半数の反対票が必要なので、保有比率10%未満のGMOだけでは竹内氏と北村氏を退任に追い込めない。黒字を継続し、コロナ禍で社会的な存在意義を高めたH.U.のトップ解任に、日本の機関投資家が応じるとも思えない。
しかし社外取締役たちは「臨時株主総会の開催を求められたらどうする」「GMOがH.U.に関するネガティブ情報を流し、我々までメディアに面白おかしく書かれるのではないか」などと考えたようだ。
「竹内さんは来年でやめてもらう」
社外取締役たちは竹内氏と北村氏がいないところで集まっては議論を重ねた。社外取締役たちの内心を慮れば、「騒ぎになって自分たちが巻き込まれたのではかなわない」ということではなかったか。「勝手にやらせておけばいい」と動かない竹内氏に不信感を募らせ、社外取締役と執行部の間の亀裂が深まっていった。
GMOの提案書が届いてから2カ月後、連休明けの25年5月7日、竹内氏は指名委員会に呼び出され、こう告げられた。
「指名委員会で議論した結果、竹内さんには来年で辞めてもらうことになりました」
竹内氏は「それは話が違う」と反発した。
冒頭の記者会見で竹内氏は「自分が退任することに異存はない」と語っている。しかし、GMOの提案書が届くまで、竹内氏と指名委員会との間では「竹内氏の意見も聞いて執行役員の中から新CEOを選ぶが、事業会社の経験しかない執行役員が、いきなり持ち株会社を経営するのは難しいので、竹内氏が会長として数年間伴走する」という申し合わせがあった。
竹内氏はこうした経緯を説明したが、指名委員会の面々は聞く耳を持たなかった。

