強烈で最も刹那だったのは、大河『光る君へ』(2024年・NHK)のぬい役。藤原道長(柄本佑)の従者・百舌彦(本多力)と逢引きする女だ。セリフはなくても、あの逢引顔は忘れない。『光る君へ』で一条天皇を好演した塩野瑛久の不倫相手を演じたのは「不倫をコウカイしてます」(2020年・テレ朝)だ。既婚者をつまみ食いする色気と、打算的な図太さ、危機回避能力の高さが半端なくて快哉を叫んだよ。

また、看護師役でも、イケメンや筋肉に目敏く反応する設定だった。合コンに行けば野呂佳代だけがモテる場面も。恋愛市場の最前列に並んでいる自覚をもち、適度な色気を発する女を体現し続けてきたので、恋愛モノ主演のオファーがあってもおかしくない。あとは事務所の戦略と力量次第だ。

女優・野呂佳代の礎を築いた芸人

「野呂佳代出演作にハズレなし」という呼び声も高いが、その礎としてはバカリズム脚本の影響が大きいと思われる。

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ブラッシュアップライフ』(2023年・日テレ)で演じた、あだ名が活用形の同級生役(ミサゴン→ゴンミサ→ゴンちゃん)、そして『ホットスポット』(2025年・日テレ)で演じた、手癖と往生際の悪い、でも不思議と多幸感のある女性役は、物語の主軸に関係ないものの、きっちり爪痕を残した。

ひとさじの鈍い「毒」とでも言おうか。記憶に残る名脇役でもある。

役者としての実力はすでに太鼓判をおされている。シングルも子持ちも演じるうえで垣根がなく、自然体の演技も評価されているし、朗らかな色気も重宝されている。

是枝裕和監督の映画『怪物』(2023年)や『箱の中の羊』(2026年)にも出演。『怪物』では主演・安藤サクラのママ友役(噂好きの表情が秀逸)、『箱の中の羊』では建築家の主人公(綾瀬はるか)に二世帯住宅の建築を依頼(義母の金で豪奢に)する夫妻役を角田晃広とともに演じた。立派な「カンヌ女優」である。

遅咲きではあったが、今や元AKB48の中でも出世頭に。作品や脚本、監督にも恵まれ、選ばれるようになった。主演作ももちろん観たいが、記憶に残る面白い役や、さらに飛躍できる難役に出合えることを願っている。

吉田 潮(よしだ・うしお)
ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。
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