100名以上の候補者の中から特定されたのは…
ナカモトが登場してから約18年の間、ジャーナリストや研究者が独自調査を進め、100名以上の人物がナカモトの候補として挙げられてきた。
例えば、クリプトグラフィー(暗号学)を研究するアイルランドの学生や、日系アメリカ人のエンジニア、南アフリカの犯罪の首謀者、映画「ビューティフル・マインド」に登場する数学家などだ。イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズがナカモトだという憶測が上がったこともある。
SNSでは、ナカモトはサムスン、東芝、ナカミチ、モトローラといった大企業だとする面白画像も登場した。サムスンのサ、東芝のトシ、ナカミチのナカ、モトローラのモトを組み合わせるとサトシ・ナカモトとなるからだ。
そんな中、4月8日、ニューヨーク・タイムズが、ナカモトを特定したとする記事を掲載し、注目されている。著者は調査ジャーナリストのジョン・キャリルー氏。同氏が特定したとする人物は、英国の暗号学者で、ビットコイン・ムーブメントを生み出したアダム・バック氏だ。
バック氏は、ナカモトがネット上でやりとりを交わしていた人物の一人だ。つまり、同紙は、ネット上で交わされていたやりとりは、ナカモト本人であるバック氏が自作自演したものだと見ているのだ。
米有力紙が「バック氏=ナカモト説」を報じた理由
バック氏はこれまでもナカモト候補として挙げられてきたが、キャリルー氏は、なぜ今になって、バック氏がナカモトだと主張しているのか?
同氏はいくつもの根拠を挙げているが、一つには、多くの人々を取材してきた中で培ったジャーナリストとしての直感があると述べている。
米ケーブル局HBOが製作した『Money Electric: The Bitcoin Mystery』を観た同氏は、あるシーンに怪しさを感じた。そのシーンでは、制作者がバック氏の目の前で、ナカモトの正体として疑われている人物の名前を次々と挙げていくのだが、バック氏は自身の名前が挙がると強張り、自分がナカモトであることを必死に否定したうえ、その会話を「オフレコ」にするよう求めたという。
「落ち着きなく泳ぐ視線、ぎこちない苦笑い、そして左手の不自然に震えるような動きは極めて怪しく見えた」
と同氏は記事の中で述べている。
キャリルー氏は、バック氏がナカモトであるという仮定の下、それを立証すべく調査を始める。注目したのは、ナカモトがビットコインについて概説した9ページの論文や、ビットコインのソフトウェアや経済、哲学についてユーザーが議論するオンライン掲示板「Bitcointalk」に残されたナカモトの投稿だ。
それらを分析した結果、キャリルー氏はナカモトとバック氏の共通点をいくつか指摘している。同氏が指摘した共通点は12点に及ぶが、いくつか興味深いものを挙げよう。(つづく)
