強豪ドイツを破ったワールドカップの舞台裏で、前田大然は何を考え、どのように戦っていたのだろうか。実は今でも「オフサイドというルールがよくわからない」と語るなど、大一番の最中に彼が抱いていた本音は驚くほどに飾らないものだった。世界を驚かせたスピードの原点と、勝利をたぐり寄せた「走る力」に込められた信念とは?

 ここでは、サッカー日本代表・前田大然の初自叙伝『がむしゃら なぜ俺は、こんなに走るのか——。』(幻冬舎)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)

©JMPA

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絶対に勝つつもりで、世界中を驚かせてやるつもりで臨んだ

 初戦のドイツ戦の約2週間前にカタール入りし、現地での調整をスタートさせる。本番6日前に隣国のUAEで行われたカナダとの国際親善試合にはベンチ入りしたけれど、出番は訪れなかった。

 移動とオフを挟み、トレーニングを再開した。フォーメーション練習が始まると、僕のポジションは4‒2‒3‒1システムの一番前だった。

 それまで代表戦で先発したのは2試合だけ。だから自分でもちょっと驚いたし、森保さんから詳しい指示や説明はなかった。

 でも期待されている仕事は理解できていた。シンプルに言うならば、自分のストロングポイントを生かしたプレーをするだけ。逆に、それ以外のプレーを求められても困ってしまう。

 前線からのプレスは武器のひとつだ。最近になって身につけたものではない。プロになる前からやってきたことなので迷いなんてない。

 相手がドイツだろうと、そんなのは関係ない。嫌がって困るくらいに追いかけ回してやると決めた。

 戦う前から弱気になる選手なんていないだろう。絶対に勝つつもりで強気に戦って、世界中を驚かせてやるつもりで臨んだ。

 すると前半8分にいきなり大チャンスが訪れる。

 右サイドの(伊東)純也くんからの低いクロスを合わせてゴールを決めた。一瞬、頭の中が真っ白になる快感を味わった。

“幻のゴール”を決めた瞬間 ©JMPA

 ぬか喜び、というやつだ。オフサイド判定でノーゴールとなり、あとで映像を見たら僕は顔を手で覆って悔しがっていた。

 実は、というか今もだけれど、オフサイドというルールがあまり理解できていない。相手のゴール前でぽつんと待っていて、DFが誰もいなかったらオフサイドになるのはわかる。