キャバクラ嬢やインフルエンサーがダイエット目的の糖尿病治療薬「マンジャロ」使用を平然と公言し、SNS上で個人間売買が横行。6月には大阪府警が医薬品医療機器法違反容疑で「マンジャロ」を無許可で販売していた男女3人を書類送検し、上野賢一郎厚生労働相が安易な使用に対し注意喚起する事態にまで発展した。
明らかに痩せている女性が「マンジャロ」など体重減少作用のあるGLP-1受容体作動薬を簡単に入手し使用するケースが増えている背景に、気軽に受診できるオンライン診療の急速な拡大がある。
コロナ禍以降、オンライン診療の制度整備と利用拡大が進む中で、これをビジネスチャンスと多くの企業が参入し、医療機関と提携する形をとってオンライン診療サービスを展開。それに伴い、ダイエット目的のGLP-1受容体作動薬の処方や、AGA(男性型脱毛症)治療薬、低用量ピルなどの安易な処方による健康被害・トラブルが国民生活センターなどに寄せられるようになり、国も適切なオンライン診療推進のために医療法を改正(2025年12月成立)するなど規制に乗り出した。
しかし、医療と縁のない企業も含め、「プラットフォームサービス」の形でオンライン診療ビジネスに参入する企業は後を絶たず、競争は水面下でより激化している。
国の規制やメディアの報道によりオンライン診療による健康被害・トラブルはある程度収まりつつあるのか、それとも増え続けているのか。オンライン診療や美容医療の実情に詳しい近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師に、オンライン診療の最近の動向と知られざるリスク、適切なサービスを患者側が見極めるためのポイントを聞いた。
一番心配なのは、健康被害が起きた時のフォロー
──オンライン診療や美容医療に対して国も規制に乗り出していますが、オンライン診療による健康被害・トラブルは収まりつつあるのでしょうか。
大塚 肌感覚で言うと、増えていると思います。国民生活センターに寄せられた美容医療による健康被害・トラブルの相談件数は2022年度以降急増し、2022年度の3798件から2024年度には1万717件へと3倍近く増えていますが、オンライン診療の解禁が大きく影響したとみられています。自費診療の美容系のトラブルは確実に増えています。
金銭面や契約上のトラブルもありますが、私が一番心配しているのは、オンラインで薬を処方して健康被害が起きた場合に責任をどう取るか、どうフォローするかが全く抜けているケースです。
例えば「マンジャロ」のようなGLP-1受容体作動薬だったら、急性膵炎、低血糖症状などの副作用のリスクがあります。十分な説明とフォローアップがなければ、体重が減ってきたせいで少し気持ち悪いだけなのか、病院を受診しなければいけない状況なのか判断できません。本来であれば、受診した医療機関に相談し診察を受け、専門的な検査や治療が必要となれば総合病院などに紹介されるという流れになりますが、そういうフォローが全くなく、患者さん本人が自分で病院を見つけなければならないケースがあります。この状況は非常に危うい。
GLP-1ダイエットでよく言われていますが、そもそも全く必要のない痩せすぎの女性に薬を出しているケースが多い。AGAも、毛が薄くなったというだけで薬が処方されるケースがありますが、実は毛が薄くなる原因はAGA以外にもたくさんあります。自己免疫疾患である円形脱毛症の場合もありますし、梅毒による脱毛症もある。毛が抜けてきたからというだけで勝手にAGAと判断し、オンラインでAGAの薬をもらって、本当の原因である梅毒を見逃したりすれば、感染を広めてしまう可能性もあります。本人も適切な治療を受けるタイミングを逃してしまいます。

