大学時代に始めたブログの簡単レシピと軽妙な関西弁の語り口が人気を呼び、いまやレシピ本は累計780万部超のベストセラーを記録する料理コラムニストの山本ゆりさん。「暮らし」をテーマにした原田ひ香さん最新作『#台所のあるところ』を語ります。(後編はこちら)
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冷蔵庫にはその家の食生活と歴史が
「台所のあるところ」と聞くと、ホカホカのご飯、食卓に並ぶ笑顔、母から子への愛情、家族団らん……まずはそんなイメージが浮かびそうだ。1人暮らしなら、台所は自分だけのワクワクするお城のように感じたりもする。でも実際は、生きていくために食べさせないといけない責任、食べきれなくて捨ててしまった食材たち、「当たり前」にされ、感謝されない母親のしんどさ…色々しんどい、煩わしい場所でもある。冷蔵庫はさらにプライベートな空間で、暮らしぶり、性格、大切なものを映し出す。何年も前に作って冷凍してあるハンバーグ、近所の人にたくさんもらった魚、小分けした冷凍ご飯。大きさ、選び方、使い方。家族か単身か、都会暮らしか島暮らしか。どこの家にもあるものだけど中は全然違って、その家の食生活と歴史が詰まっている。家の中でも特に色濃く人物像をうつす場所であることを、この本を読んで気がついた。
本書は、そんな冷蔵庫や台所が話の随所に登場する5人の主人公の物語だ。それぞれ年齢も性格も境遇もバラバラ。でも、ままならない感情を抱えながら、たまたま同じ深夜ドラマ「台所のあるところ」を観ている点で少しつながっている。
