――なるほど。身体接触を伴うサービスを行う分リスクもあるでしょうし、もっと稼げる仕事だと勝手にイメージしてしまっていました。

藤谷 本書のインタビューパートでも触れていますが、多くの場合、特に最初はあまり稼げる仕事ではないとみていいと思います。男性の場合、性的接触を伴わない肉体労働のほうが稼げる、という話も聞きます。

 ただ、「他の仕事をすればいい」というけれど、職業選択の自由があるのだからといってこの性風俗の仕事がハードであっていい理由にはなりませんよね。性風俗で働く多くの人は個人事業主なので労働基準法の外ですが、お客さんからのメッセージに返信したり、SNSを更新したり、ツイキャスやTikTokで配信するような、接客する時間以外の稼働も多い。本書の取材で、SNS時代以降、お店にお客さんがつくというよりはセラピスト自身につく傾向が高いという話を何度か耳にしました。

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 私のようなフリーランスのライターも、本を出しても自分で宣伝しないと読者まで届かないと実感しています。たとえば、こんな風に取材を受けたり、あるいはSNSやYouTubeやポッドキャストの露出を増やして読者との接点を作らないと「知って」もらえない。自分の判断でやっていることですが、そこで対価が発生しないので結果に結びつかないと徒労に終わりますよね。

©志水隆/文藝春秋

――集客のためにそうせざるを得ないから、対価なしでもやっていると。それも確かに搾取的ですね。

“搾取”という言葉に寄せられた想定外の反応

藤谷 話は変わるんですが、この本で“搾取”という言葉を使ったこと、それ自体への反響が結構あって。感想のメッセージだったり、こういった取材の場だったりでも、“搾取”という言葉を大事(おおごと)としてとられているというか。

 いや、大事なのはそうなのですが、たとえば「推し活」的な議論において“搾取”という言葉は頻出しているし、2024年に「推し活」についての対談集(『藤谷千明 推し問答! あなたにとって「推し活」ってなんですか?』)を出したのですが、そこでは“搾取”って言葉が飛び交っていても、異を唱える人はいなかったように思います。

――今回の本が、共通言語が通じる範囲を超えたところまで届いているということなんでしょうか。

藤谷 おそらく、“搾取”という言葉に戸惑っているのは、その言葉を自分に向けられたことに驚いた、加害者だと指をさされた気分になったのかなと感じます。

 一方で、自分自身もコミュニケーションを簡略化するために“搾取”のような強い言葉を気軽に使っていたのかもしれない、とも感じました。

 世の中のみんなが自分の考えている前提を共有してくれると思っていたというか。それこそエコーチェンバーとかフィルターバブルの内側の言葉だったのかもしれない。逆に言えば、それだけ本がバブルの外側まで届いた、ということなんでしょうね。

次の記事に続く なぜ「トー横女子を買う男性」のほうは注目されないのか? 性風俗の現場に飛び込み取材したライターが語る、“かわいそうな少女”に欲情する歪んだ社会