実は、最初に「ヒストリカル・コミュニケーター」を名乗った時は半分冗談で、笑いを取りにいったつもりだったんです。ところが「そうなんですか!」と真に受けられてしまって……。もう、後には引けなくなってしまいました(笑)。
いずれにせよ、YouTuberとしての活動は、いたって本気でやります。今のところ、ユーモアを交えながら歴史を紹介する内容ときわめて真面目に歴史の深淵を案内する方向性の内容の両輪を回していこうと考えています。
藤田医科大学からのオファー
そして、そんな私の思いと、見事に合致したのが、藤田医科大学からのオファーでした。定年退職して社会に放り出された私を、リベラルアーツセンターのセンター長として迎えてくれたのです。
愛知県の豊明市にある藤田医大は、医師や看護師、医療技術者を育成する大学です。彼らは、学生たちに人文系のエッセンスを伝えたい、と私に白羽の矢を立ててくれました。その考えは至極真っ当で、理にかなっています。
以前、私は血栓で足がパンパンに腫れ上がり、入院した経験があります。その時、エコーやCT、MRIといった現代医療が駆使されるのを目の当たりにして、技術の進歩に心底震えました。杉田玄白が解剖を行ってから数百年の間に、日本の医療はここまで来たのかと。私たちが古文書を読むために機械を導入しても、ちっとも読めるようにならないのとは大違いです(笑)。
しかし同時に、技術がどれほど進歩しようとも、医療が最後に向き合うのは「人間」です。死とは何か。老いとは何か。そういった哲学的な問いと向き合って、人間に寄り添えるお医者さんでなければ、いくらメスさばきが上手くても心細いですよね。だからこそ藤田医大は、医学だけでなく歴史を通じて、人文科学の素養も身につけてもらいたい、と私に声をかけてくれたのです。
※この続きでは、藤田医科大学で配信準備が進められている「ガチの歴史YouTube」の構想を、本郷和人さんが語っています。約7000字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年7月号に掲載されています(本郷和人「家康型“第二の人生”を目指します」)。
※本郷和人さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧下さい
■ほんごうかずと 1960年生まれ。東大史料編纂所教授を経て、藤田医大特命教授・リベラルアーツセンター長。専門は日本中世政治史、古文書学。近著に『こわい日本史』(扶桑社)など


