緊縛された被害者を放置し、賭博に興じる
4月17日の午後7時30分頃、ハシヅメとナカニシは時間差をつけて千葉県松戸市にあるコンドウさんの自宅に侵入した。ハシヅメは玄関先でコンドウさんに対し、用意していた狂言強盗のシナリオを語り、協力を求めた。
しかし、突然の不可解な要求に対し、コンドウさんは「何で協力するのかな」と渋る姿勢を見せた。当然の反応である。さらに彼には、決してこのような危険なトラブルに巻き込まれるわけにはいかない切実な事情があった。白血病で闘病中の妹を救うため、自らがドナーとなってリンパ球を提供する日が目前に迫っていたのだ。妹の命を預かる大切な身体である以上、犯罪の片棒を担ぐような理不尽な要求など到底呑めるはずもなかったのである。
交渉が通じないと見るや、ハシヅメは本性を現す。隠し持っていた包丁を取り出してコンドウさんの目の前に突きつけ、脅迫に出たのである。刃物の前で無抵抗となると上半身をハシヅメが持参したロープで縛り上げ、ナカニシが両手首をガムテープでぐるぐる巻きにした。さらにハシヅメはコンドウさんの口に猿ぐつわを噛ませ、声を発せられない状態にした。
応接間の1人用ソファに縛り付けられたコンドウさんを前に、ハシヅメは居間のテーブル脇にあった財布を奪い取っていく。中には現金数万円と、キャッシュカード3枚、クレジットカード1枚などが入っていた。ハシヅメはここでも引き続き狂言強盗への協力を口にしながら、キャッシュカードの暗証番号を教えるよう何度も執拗に迫った。
コンドウさんは暗証番号を教えることを拒み続けた。すると、その横で本件の包丁を手にして弄んでいたナカニシが苛立ちを露わにする。ナカニシは手にしていた包丁を振り下ろし、ソファの肘掛けに激しく叩きつけた。
「早く言えよ」
怒気を孕んだナカニシの脅迫に恐怖を感じたのか、コンドウさんはついにキャッシュカードの暗証番号を口にしてしまう。
ここからのハシヅメの行動は、常軌を逸している。
暗証番号を聞き出したハシヅメは、コンドウさんの所有する自動車に乗り込み、現金を引き出すために単身で埼玉県川口市へと向かった。向かった先は、銀行のATMではない。
彼が日頃から入り浸っていた違法カジノクラブであった。ハシヅメはカジノの従業員に奪ったキャッシュカード3枚と暗証番号を記したメモを渡し、現金の引き出しを指示した。
従業員がATMを回って合計150万円を引き出している間、ハシヅメはそのカジノクラブの店内で、奪ったばかりの金を元手にバカラに興じていたのである。
その間、コンドウさんの自宅に残されたナカニシは、逃亡を防ぐためのさらなる行動に出ていた。すでにロープとガムテープで体と手首を縛られ、猿ぐつわをされているコンドウさんに対し、ナカニシは彼の体をソファごとガムテープで二重、三重に巻き付け、完全に身動きが取れない状態にして監視を続けていたのだ。
翌18日の午前零時を過ぎた頃、ハシヅメはようやくコンドウさん宅へと戻ってきた。ギャンブルを終えたハシヅメの次の目的は、自らの借金を帳消しにするための「殺害」を実行に移すことであった。
