その友達は、南米の音楽を演奏するなど趣味の多い人。一度、家に遊びに来た時にお会いしたのですが、とてもユニークで魅力的な人でした。受験からようやく解放され、ストレスやプレッシャーからも解放された姉は、大学生活を楽しんでいるように見えました。しかし専門課程に進むと彼女は獣医学部に進んでしまったので、姉と長く付き合うところまではいきませんでした。
2年生になると専門の実習が始まります。数人でグループを作って臨む解剖実習は、姉にとってストレスだったようです。学部に女子がほとんどいない男ばかりの環境だったので、姉にもいろいろと誘いの声がかかってきたらしい。
人間関係でつまずいてしまったことがきっかけで
しかし姉は男性と接することに慣れておらず、どう対応すればよいのかわからなかった。女性の友達もいないから、尊敬する父に相談したわけです。
その父だって世慣れているわけではないので、月並みに「いきなり一人に決めるんじゃなくて、最初のうちは満遍なく交流してみては」くらいの助言しかできない。だけど、そのアドバイスは父の言葉ですから、姉にとっては大きな影響力がある。姉は父に言われるまま実行してみたんでしょう。その結果、人間関係でつまずき、孤立してしまったのです。
私から見ても姉の調子が悪そうだったので母に尋ねたところ、そのような経緯を聞かされましたが、母の言葉からは少し被害妄想めいた印象も受けました。いずれにせよ、人間関係でつまずいてしまったことがきっかけで、姉は実習にほとんど参加できなくなってしまった。
姉は4年も浪人を続け、やっと医学部へ入った。彼女にとってどこかで医学部合格が人生の目標になってしまい、入学した後は乗り越えるべきものがなくなったようにも見えました。
そのあたりから、姉は大学からの帰り道、最寄り駅から家までの道中でゴミを拾ってくるようになりました。歩道の脇に捨ててある、ビニール袋や空き缶などです。
ある時、帰宅した姉を出迎えて玄関を開けると、両手にゴミを抱えた姉が立っていた。なぜゴミを拾ってくるのか詳しくは聞けませんでした。あくまで想像に過ぎませんが、自分の心をすっきりさせたくて、ゴミを拾って道を綺麗にしていたのかもしれません。
姉に大きな急性症状が出て、救急車を呼ぶことになったのは、ちょうどその頃のことでした。

