荒れる子どもたちと本気で向き合う更生施設「みらいの里」。𠮷田恵輔監督の最新作『四月の余白』は、そこで働く大人たちと、行き場を失った少年少女のぶつかり合いを描く。主人公・西健吾は元半グレで元受刑者。かつて罪を犯しながらも、今は子どもたちの未来のために奔走する施設の運営者であり寮長だ。暴力の“さじ加減”を知り、どんな悪ガキにも動じない百戦錬磨の男でありながら、その胸の奥には、消えない過去と、人間の可能性を信じ続ける強い意志が渦巻いている。
この難役を演じるのが、角界の裏側を描いたNetflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』(23年)で主人公・猿桜を演じ、一躍注目を集めた一ノ瀬ワタルだ。格闘家として鍛え上げた屈強な身体性と、繊細な感情表現、さらにバラエティ番組などでよく見せるチャーミングな笑顔を併せ持つ彼だが、本作は劇場映画での初主演となる。実は数年前、一ノ瀬は𠮷田監督の『愛しのアイリーン』(18年)のオーディションを受けたことがあった。
「ヤクザ役で受けたんですけど、『キャラが濃すぎる』『いかにもすぎる』って言われて落ちました(笑)。でも今回、𠮷田監督にお会いしたときに『オーディションに来てくれたよね』と声をかけられて、覚えていてくれたんだ、とうれしくなりました。ただ、まさか主演で呼んでもらえるとは思ってなかったので、うれしさと同時に不安も大きかったです」
現場では“受け手の芝居”を求められた
『サンクチュアリ』で主演を経験したとはいえ、今回の主演はまったく別物だった。𠮷田監督から求められたのは、“受け手としての一ノ瀬ワタル”だ。
「自分の芝居は、これまで“攻め”ることが多かったけど、今回は徹底して“受け”を意識してくれと言われました。つまり、濃い味付けじゃなく、薄い味付けで相手を受け止める芝居をしてほしい、と。僕にとって完全に未知への挑戦でしたね」
「みらいの里」にやってくる子どもたちの中でも、西が最も手を焼くのが、他者の痛みを理解できず、行きすぎた暴力に走ってしまう少年・海斗(上阪隼人)だ。一見強面からは遠い風情だが、簡単に一線を越えてしまう狂気や危うさを抱えた少年で、彼との対峙は一ノ瀬にとってもヘヴィな体験となったらしい。
「海斗と向き合うシーンは本当にエネルギーが要りました。学校でも家でも救いがない状況の彼を受け止め続けようとするのは……お芝居とはいえ、何度も胸が潰れそうになりました」

