ベテラン勢にも十分な可能性 月へ向かうのは誰なのか
日本人宇宙飛行士の月面着陸をめぐっては、諏訪さんと米田さんに注目が集まりがちですが、ベテランの日本人宇宙飛行士も含め、全員が等しく搭乗の機会を持っているとの考えをJAXAの山川理事長は示しています。
星出彰彦さんは、現役のJAXA宇宙飛行士の中で最も飛行経験が多い宇宙飛行士です。宇宙滞在は3回。ISS船長を務め、船外活動も計28時間17分行っています。宇宙飛行士になるまでの道のりも長く、大学生のときに最初の募集がありましたが、当時は応募条件を満たしていませんでした。その後も挑戦を続け、3度目の選抜試験で合格しています。油井亀美也さんは、航空自衛隊出身の元テストパイロット。ISSでのロボットアーム運用などに加え、宇宙での体験を自身の言葉や写真で伝える表現力と発信力もあります。
大西卓哉さんは、全日本空輸の元パイロットで、ISS船長も経験しています。日米合意に寄せたメッセージでは、「私もアポロを知らない世代の一人として、月面で活動する日本人宇宙飛行士に選ばれるよう、飛行士としてのスキルを磨いていきます!」と述べており、月面活動への意欲をかなり率直に示しています。過去の取材でも、月面探査への関心の高さは随所ににじんでいました。金井宣茂さんは、海上自衛隊で外科医、潜水医官として勤務した経歴を持ちます。地球にすぐ戻れない月面活動では、医療や特殊環境での経験が意味を持つ場面もあるでしょう。
有人月面探査を見据えた訓練も行われています。大西さんと金井さんは、欧州宇宙機関のPANGAEA訓練に参加しました。PANGAEAは、月や火星などでの有人探査を想定し、地質学の基礎やフィールドワークの方法を学ぶ訓練です。ISSでは求められなかった、月面で地形を見て、観察し、サンプルを選ぶ能力が、これからの有人探査では重要になります。
誰が月に向かうのかは、能力の優劣だけでは決まりません。ミッションごとに求められる役割、訓練のタイミング、国際調整、年齢、健康状態などが絡みます。全員に強みがあるからこそ、最後は巡り合わせの要素も大きいはずです。
『宇宙兄弟』でヒビトは、月面に降り立った瞬間に「イェーイ」と叫びました。現実の日本人宇宙飛行士は、月でどんな言葉を残すのか。その日を待ちたいと思います。
