地域の物語の主人公
——序盤から魅力的な住民たちが登場し、彼らが次第に主たる登場人物となっていきます。彼らを選んだ際に、どのような点に注目したのでしょうか。
ゲリン 個人の性質や、その人が内包する物語はもちろんですが、やはり「この地区を表す人々」という基準で選びました。例えば、炭を売っているアントニオさんは、今は廃墟となってしまった場所の記憶を持っている人であり、その廃墟をとても人間的に表現してくれました。一方で、ニコラスさんは今は地区に新しく建てられたアパートに住んでいますが、年老い、次第に過去の記憶を失いつつあります。他に、アフリカやヨーロッパ、色々なところから逃れてきた移民たちも登場します。現代のロシアとウクライナの問題を表すような、ウクライナからの移民の人も選びました。彼らすべてが、あの地域の物語の主人公だと言えるのです。
元農民、街が衰退していく様を見てきた人、強制的に移住せざるを得なかった人々など、様々な人々の物語を映画は重ね合わせていく。数多くの人々を撮影したが、その大半は使用されなかったそうだ。フランコ政権時代に故郷を追われるなどして最初にこの地域に住み着いた人々は、山や森を切り開き、行政の許可を得ずに住居を建てた。それがやがて村になっていった。
ゲリン スペインやイタリアなど地中海の国々では、都市の周辺に移ってきた人々がバラックを建てて、どんどん街が広がっていくという現象があります。バラックを建てること自体は違法なのですが、一晩で建ててしまい、天井ができてそこに人が住んでいると、警察はそれを撤去できないという法律があるのです。そのため、地域の人々はみんなで団結し、夜の間に一晩でバラックを建ててしまっていました。ヴィットリオ・デ・シーカの映画『屋根』(1956)にも、天井を塞ぎさえすれば自分たちはそこに住めるという描写がありましたね。
人々は生き残りを懸けてまずは家を建て、水や電気、学校といったインフラを獲得するまでが戦いでした。バルボナにもそういう長い過酷な歴史があり、そして今ではあらたな開発にさらされているのです。そのため住民からは、「君は来るのが遅かった。バルボナはもう消え去る運命にある」と何度も言われました。しかし私は、彼らの「現在」を撮ることによって、これまでの「過去」の足跡も一緒に映し出したいと思ったのです。

