1949年6月、兵庫県飾磨郡菅野村の住宅で火災が発生。焼け跡から発見されたのは、家主の妻(当時66歳)の無惨な遺体だった。検視の結果、その体には刃物による複数の傷が残されており、警察は放火殺人事件と断定。
寝たきりの夫は当初「自分が火をつけた」と話したが、やがて捜査線上に、ある意外な人物が浮かび上がる。その人物を凶行に駆り立てたのは、ひとつの言葉だった。
誰が彼女を殺したのか
捜査線上に浮上し、逮捕されたのは近隣に住むある人物だった。生活苦の中、頼みの綱として被害者の夫・福松のもとへ金の無心に訪れたが、その妻・カネから「そんなに困っているなら体でも売ればいい」と心ない言葉で罵倒され、追い払われていた。
だが、逮捕された人物が抱えていたのは借金の苦しみだけではなかった。幼いころから自分を気にかけてくれる福松を、「本当の父親ではないか」と感じていた。本人に確認したこともあったが、福松は決して否定しなかったという。一方、そのカネは夫の結核がうつることを恐れ、福松を1階に隔離して自分は2階で寝起きしていた。献身的に福松の世話をしてきたその人物にとって、カネの言葉は単なる侮辱ではなかった。
罵倒された翌日の未明、その人物は鎌を手に再び天見家へ。金品を物色していたところ物音で目を覚ましたカネと鉢合わせになり、咄嗟に鎌を振り上げて殺害。現金1万8千円と101着もの衣類を奪うと、家に火を放ち逃走した。
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