兵庫県の住宅で66歳女性の焼死体が発見された。寝たきりの夫は「自分が死ぬために火をつけた」と訴えるが、捜査線に浮上したのは「意外な人物」だった――。1949年に起きた事件の発端を、鉄人社の文庫新刊『戦後まもない日本で起きた30の怖い事件』よりお届けする。(全2回の1回目/続きを読む

写真はイメージ ©getty

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焼死体として発見されたのは⋯

 1949年(昭和24年)6月10日未明、兵庫県飾磨郡菅野村(現・姫路市)の住宅から火災が発生。この家に住む天見カネ(当時66歳)の焼死体が見つかった。夫の福松(同70歳)は近隣住民によって助け出されたが、その際に彼は頑なに救助を拒否。「自分が死ぬために家に火をつけた」と訴えていた。

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 検視によりカネの体から刃物による複数の傷が発見されたことで警察は放火殺人事件と断定。夫に嫌疑を向けるも、当時、福松は肺結核を患い寝たきりの状態。そんな体で犯行に及ぶのは到底不可能だった。

 聞き込みにより捜査線に浮上したのは、近隣に住む山本宏子(同34歳)という女性である。天見宅で火事が起こった際、現場から走って逃げる姿が目撃されていた。宏子は事情聴取に対してあっさり犯行を認め、その場で逮捕された。事件から5日後、同月15日のことだ。

 宏子は1915年(大正4年)、菅野村で私生児として生まれた。少女時代は三味線や舞踊などをたしなみ、長じて看護師に。その後、見合い結婚で婿養子をもらったのを機に職を辞め7人の子供に恵まれる(うち3人は幼少期に死亡)。

 が、夫は病弱なうえに生来の怠け者で、婿に入ったのだから養ってもらうのが当然と一向に働く素振りを見せない。そこで、宏子は近所の農家を手伝うなどして家計を支えるも暮らしは楽になるどころか、日に日に困窮していく。