「自分が流行を作る」というマイケルの強烈な意志
強烈な個性を持つ人間がぶつかり合うのは不思議なことではない。しかし、マイケルとマドンナは、まさに真逆のキャラクターだった。西寺郷太氏の著書『マイケル・ジャクソン』に、それを裏付ける証言が記されている。
時代の変化に柔軟に対応してきたマドンナには、過去の輝かしいセルフイメージに固執するマイケルがもどかしく見えていたのだ。「イン・ザ・クローゼット」での共作に際し、マドンナはこう言ったという。
〈「ねぇ、マイケル、あなたみたいな格好してる人、今クラブにどこにもいないわ。完全にイメージ・チェンジして新しいスタイルにとびこむべきよ」〉(西寺郷太『マイケル・ジャクソン』講談社現代新書)
90年代の音楽をやるのであれば、それにふさわしいスタイルの変化が必要だとマドンナは言っているのである。
だが、マイケルはそれを気軽に受け入れるような人間ではなかった。彼には時代を超越した自分だけの美学があったのである。
トレードマークである白いソックスについて語るマイケルの言葉から、その強固な信念がうかがえる。兄のジャーメインが呆れようとも、マイケルは確信を持って白いソックスを履き続けた。
〈流行からはずれてると言われれば、やる、というのが僕の姿勢なのです〉(田中康夫:訳『ムーンウォーク マイケル・ジャクソン自伝』河出書房新社)
つまり、マイケルは自分が時代に合わせるのではなく、我こそが流行を生み出していると自負していたのだ。器に合わせて形を変え続けるマドンナと、器そのものを作るマイケル。アーティストとしての決定的な違いがうかがえる発言だろう。自己を補強していくマイケルと、逆に自己を解放していくマドンナ。別々の道を行かざるを得ない運命だったのだ。
ともかく、マイケルとマドンナ、夢の共演は実現しないまま終わった。



