マイケルの魂と一緒に踊りなさい
だが、そのふたりの見えない絆がうかがえるエピソードが残っている。
そのキーとなったのは、国内外で活躍する日本人ダンサー、ケント・モリだった。マドンナの「Sticky & Sweet World Tour」(2008~09年)でダンサーとして活動していたモリは、同じ時期に行われたマイケルの「THIS IS IT」ツアーのオーディションに合格する。幼いころからマイケルと共演することが夢だったモリにとって、千載一遇のチャンスだった。しかし、マドンナとの契約が残っていたこともあり、モリは「THIS IS IT」への出演を断念しなければならなかった。
「Sticky & Sweet World Tour」開催中の2009年6月25日、世界中にマイケル死去のニュースが駆け巡った。するとマドンナは自身のライブにトリビュートパートを設けることを提案した。「ビリー・ジーン」、「アナザー・パート・オブ・ミー」、「スタート・サムシング」でモリのダンスコーナーをフィーチャーしたのだ。
マドンナは「あなたがマイケルの魂と一緒に踊りなさい」と言って送り出したという。マイケルに憧れ、マドンナに寵愛された日本人が、魂の和解を仲介したのである。
そして、2026年のいま。映画『Michael/マイケル』が公開された。スクリーンのマイケル(ジャファー・ジャクソン)は当時のムーンウォークを披露し、赤いレザージャケットを着込んでいる。「変わらない」マイケルの姿を体感しようと、全世界の映画館に観客が詰めかけ、空前の大ヒットを記録しているのは、ご存じのとおりだ。
一方、マドンナはサブリナ・カーペンターとの共演や、チャーリーXCXとの交流で世間を賑わせている。相変わらずマドンナは、トレンドをフォローし、変化することで今もなおスターとして君臨している。。
時代は流れても、ふたりの大スターが持つ魂は、何も変わっていない。
こうして見ると、35年前のアカデミー賞で結ばれた手は、まるで固い契りを交わしていたかのようにも思える。
「私たちは、決して混じり合わない」と。



