右腕を噛まれ、顔もイガグリだらけに
宮野さんは右腕を噛まれ、右手の親指の付け根の部分は牙が貫通した。
「実際に揉み合っていた時間は20秒か30秒ぐらいだったと思う。クマの力がフッと抜けた瞬間に先に立ち上がり、大声を上げたんだ。するとクマは草むらの方に走って行った。着ていたジャンパーはボロボロ。顔もイガグリだらけで血が出ていた」(同前)
宮野さんは病院で「血を出したほうがいいから」と包帯を巻かれ、抗生剤の点滴を打った。市が現場に箱罠を仕掛けたところ、昨年だけで同じ罠に4頭のクマがかかったという。
鹿角市や隣の北秋田市は県内でも有数のクマの生息地だ。この地域の病院に勤務する医療関係者がいう。
「23年にクマ被害で病院に運ばれる人が急に増えました。目から喉までクマに持っていかれた酷い傷を負った患者さんもいれば、脚を噛まれただけで済んだ人もいます。クマの傷で一番怖いのはクマが持つ細菌です。身体中に細菌が回ってしまうと、いくら手術をしても吸入器をつけても助からない。そのため受傷者にはまず、抗生剤をガンガン投与してクマの持つ細菌を無効化します」
秋田市の南、由利本荘市の中心部にある本荘公園では今年6月に入ってクマの目撃が相次いだ。この公園から東に400メートルほど離れた住宅地に住む村田絹代さん(87、仮名)がクマに遭遇したのは9日朝のことだ。村田さんが語る。
「朝6時でした。新聞を取ろうと玄関のドアを開け、『天気はどうだろう』と顔を上げると、塀の陰からクマが立って歩いてきたんです。クマの背は私の肩ぐらいなので12、30センチだったと思います。私は『アーッ、クマだ!』と叫び、ドアを閉めました」
村田さんはドアを閉めた拍子に後ろに転倒し、頭や右肘などを打ったが、幸い、軽傷で済んだ。嫁入りの際に持参した壺がドアの脇に置かれたまま割れており、目の前までクマが迫っていたことを物語っていた。