地味な変化にも感じられるが、これはかなり大きい。かつての巨人は、よくも悪くも「監督の存在感」でベンチが成立する球団だった。監督席は、采配の玉座であり、チームの中心点だった。ところが橋上巨人では、監督代行が椅子に固定されず、ベンチの中を動く。これは「俺を見るな、状況を見ろ」という態度に近い。
もちろん、座らないから名将という単純な話ではない。ただ、選手から見れば、監督が“評価者”として奥に構えているより、“調整役”として近くにいる方が、心理的な距離は縮まるだろう。今の巨人のベンチにある軽やかさは、単なる雰囲気論ではなく、物理的な立ち位置の変化から生じている。
はっきりとしたサインに応える若手選手
橋上巨人の特徴として若手の積極起用が挙げられる。しかし、橋上監督代行は若手をただ並べているわけでない。若手に「何をやらせるか」を明確にしているのが特徴だ。
6月5日のロッテ戦では、阿部政権下で打撃不振から二軍降格も経験した中山礼都にスタメンの機会を与えた。同試合では、浦田俊輔にバスターエンドランのサインを出した。浦田は空振りしたが、走者の泉口友汰はスタートを切って盗塁を成功させ、浦田もその後に強気のバスターで右前打を放った。失敗の直後に、選手が顔を下げず、次のプレーに入っている。このはっきりとしたサイン、そして若手の躍動こそ、橋上巨人らしさの特徴だ。
さらに、巨人は原稿執筆時(7月6日時点)で74試合52盗塁を記録しており、その数は12球団最多タイ(最低はオリックスの25盗塁、12球団平均は40.5盗塁)である。前年最下位の記録で改善が求められていた走塁指標が、明確に武器になっている。各方面から果敢な走塁采配を評価される橋上監督代行は、選手個々の研究、思い切り、コーチやスコアラーの努力を理由に挙げている。
重要なのは、「走れ」と命じているだけではなく、「走っていい」という空気をチームで作っていることだ。地位を築く途上にある若手にとって一番きついのは、ミスした瞬間に翌日の出番が消える環境だろう。橋上巨人は、そうした選手の不安を払拭しようとしている。
失敗を罰しない
6月14日の西武戦では、浦田が牽制死を喫した。しかも前日から牽制死が続いていた。普通なら監督コメントに「反省」「注意」「課題」という言葉が並びそうな場面だ。だが橋上監督代行は、積極走塁には良い面と悪い面があると整理し、「今後に規制がかかるとは考えてない」と話した。
