この8月、漫画家のさくらももこさんが乳がんで亡くなった(享年53)ことが大きなニュースとなりました。我が家では昔から「笑点」「ちびまる子ちゃん」「サザエさん」と国民的番組をはしごするのが日曜日の定番です。それだけに、早すぎる死がとても残念です。ご冥福をお祈りいたします。
ところで、北斗晶さん、小林麻央さんのときもそうですが、有名人が乳がんになったというニュースが流れると、必ずと言っていいほど早期発見の重要性を訴え、乳がん検診の受診を促すような新聞記事やネット記事が掲載されます。
医師が書いた記事にも誤りがある
私はそんな記事を見るたびに、毎回うんざりさせられます。なぜなら、科学的根拠に基づく医療(EBM)の観点から見ると、かならずしも「正しい」とは言えない内容が少なくないからです。記者が思い込みで書いたものだけでなく、医師のコメントや医師が書いた記事の中にも、疑問に感じざるを得ないものがあります。
がん検診は「とにかく受ければいい」というものではありません。科学的根拠に基づいて、推奨される年代や方法が決まっています。それを踏まえずに、とにかく乳がん検診を受けさせようとすることは、多くの人に間違った行動を引き起こさせるだけでなく、不利益(害)を被らせる恐れもあるのです。
とくに医療記事を書く記者や編集者に言いたいのですが、「誰でもいいから医師のコメントを載せておけば安心」という考えは危険です。EBMでは、「患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見」のエビデンスレベルは最低ランクだからです(国立がん研究センターがん情報サービス「ガイドラインとは」3ガイドライン策定プロセスとは3)エビデンス・レベルなどを参照)。
そのため、乳がん検診についても、多くの人に誤解があります。そこで、代表的な4つの誤解について、国のガイドライン(国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがん検診推進のページ」)や日本乳癌学会のガイドライン(「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」2016年版)などに基づいて、整理したいと思います。