笑わせる。自分の思考や感情が、安っぽいオモチャのように弄ばれたという屈辱。それは金銭的損失よりも、重く心にのしかかった。

 私は、私自身に裏切られたのだ。長年かけて築いてきた理性も、知識も、経験も、何一つ役に立たなかった。それどころか、このちっぽけなプライドこそが、詐欺師にとって格好の餌食だった。その事実に気づいたとき、私は自分のすべてが信じられなくなった。

 鏡に映る自分が、ひどくみすぼらしい、見知らぬ男に見えた。血の気が引き、底なしの絶望と、激しい自己嫌悪がこみ上げる。

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 そして、その嫌悪感は、一つの記憶を呼び覚ました。――私は、親友を騙した。――その信頼を、ドブに捨てたのだ。

氷の言葉

 受話器を握る手が、じっとりと汗ばんでいた。壁の時計の秒針が、やけに大きく聞こえる。カチ、カチ、と。それはまるで、私の心臓の音を数えているかのようだった。頭の中では、愛子の悲痛な声が、まだ鳴り続けていた。

「資産が凍結されたの。お願い、助けて」

 あの女の言葉は、調合された毒となり、私の思考をゆっくりと蝕んでいた。

 どうして、こんな単純な嘘を見抜けなかったのか。どうして、信じてしまったのか。

 万策尽きた私は、小学校からの親友・大楠に電話をかけた。