ロマンス詐欺の巧妙な手口に陥り、計925万円もの老後資金を騙し取られた70歳の法学者・高倉良一氏。あろうことか小学校からの親友に嘘をついて350万円を借金し、それすらも詐欺師に送金してしまった。
絶望の中、真実を打ち明けた彼に親友が放ったのは、「詐欺かどうかはどうでもいい。いつ返すかだ」「自分を慰めるための本など誰も読みたくない」という氷のように冷たい言葉だった。
親友からの絶縁状態、そして世間から浴びせられる「自業自得」「名誉教授が聞いてあきれる」という容赦ない非難。見えない独房のような孤独の中で、なぜ彼は自身の「みっともない恥」を世間にさらし、筆を執る決意をしたのか。そこには、親友の厳しい言葉に隠された“本当の優しさ”への気づきがあった――。新刊『70歳の法学者が、なぜロマンス詐欺に騙されたのか』(さくら舎)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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独房の闇
その一言で、私は自分の立ち位置を思い知らされた。私は同情されるべき「被害者」ではない。約束を破り、友を欺いた「嘘つき」だ。
「なあ、髙倉。一般論として言うが」その前置きが、私たちの間に分厚い壁を作った。
「あなたは大学の先生だったんだろ。法律や、人の生き方を教えてきた人間じゃないのか。そのあなたが、他人を騙して金を借りるのか」
一言一言が心臓に突き刺さる。そうだ。私は教育者だった。
その同じ口で、親友に嘘をつき、金を無心した。これ以上ない自己矛盾。狂気の沙汰だ。
「……申し訳ない」
