もし彼の一言がなかったら⋯
その姿をまっすぐに見ることは、何よりもつらいことでした。しかし、その痛みこそが、私の人生をもう一度深く考えるための、かけがえのない「きっかけ」になったのです。
もし彼の厳しい一言がなかったら、私は今でも「かわいそうな被害者」の役割に甘んじ、詐欺師を恨み、自分の運の悪さを嘆くだけの毎日を送っていたかもしれません。
彼の言葉は、私の生き方そのものを問うものであり、根本的な問いでした。
それに向き合うことで、私は初めて、自分の心の奥に隠れていた、ちっぽけなプライドや独りになることへの怖れ、楽して成功したいという欲望の存在に気づかされたのです。
この一件で失ったものは、お金だけではなく、本当に数え切れません。しかし、それまで気づかなかった「人生の深み」のようなものを私に与えてくれたのも、また事実です。
それは、順調な人生では決して手に入らなかったであろう、痛みから生まれる思いやり、失敗から生まれる謙虚さ、そして絶望から生まれる使命感でした。
正直に言うと、私はまだ彼に連絡できずにいます。彼の信頼を裏切ってしまったという事実が、重く心にのしかかっているからです。
しかし、この本を書き続けることこそが、彼の友情に応えるたった一つの道だと信じています。彼の厳しい言葉から逃げずに、自分の過ちのすべてを世に伝え、社会のために役立てること。それこそが、彼の厳しい愛情に対する、私なりの誠実な答えなのだと思っています。