水谷さんは言う。
「マンションを買うとき、住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)は、ヒューザーのマンションは公庫独自の評価基準をクリアしたいい建物だから心配ないと言って、抵当権をつけて、わたしたちにお金を貸したんです。それが欠陥マンションだったのは、彼らに見る目がなかったからでしょう。その責任を取ってほしい。貸し手にも責任はあるはずです」
被災住民は、退去から建て替えが完了するまでの3年間、ローンの支払いを凍結してほしいと各金融機関に訴えた。住宅金融公庫は、元金と利子の支払いを3年間猶予し、支払期間も最大3年間延長する。三井住友銀行とみずほ銀行も、ほぼ公庫に追従した。一見、救済措置のようだが、長期的にみれば総支払額は増える。
むしろ中小の金融機関のほうが、被災住民に寄り添う姿勢をみせた。さわやか信用金庫は、建て替えから再入居までの3年間のローンの利息を「ゼロ」にした。元本の返済も3年間ストップし、避難先でのローン支払い負担を一時的になくす。東京信用金庫は、耐震偽装による退去が始まった2005年12月から06年9月までの金利を2パーセント台から0.5パーセントまで下げた。両信金の総支払額は、ローンを組んだときよりも減る。
新たなローンを組めず、自己破産に陥った住民もいた
その後、国は、約80億円の公費を投入し、耐震偽装で居住者が避難したマンション11棟を建て替えに導いた。解体費用は国と都道府県とで100パーセント補助したが、建て替えに参加した被災住民は2000万円前後のローンを新たに抱えねばならなかった。
水谷さんは、こう述べる。
「明らかに過剰債務ですよ。ローンが組めず、自己破産に追い込まれた人が複数いらっしゃいます。離婚して移転した人もいる。転売を前提に建て替えに加わった人もいます。オーバーローンでマンションに残った方を、どうやってこれからケアしていけばいいか、悩ましいですよ。
最後の最後は、皆でお金を出し合って基金をつくって工面しようか、とか言ってます。そうやってでも戻りたい人は救おうと考えています。僕ら、思いっきり逆風を浴びながら、寝る間も惜しんで手分けして各方面に働きかけています。一つ屋根の下の絆みたいなものが、できているんですよ」
私の取材から2年後、水谷さんのマンションは建て替えられた。
それにしても、国は、建物の安全性を担保する建築基準法を運用しているのに、なぜ、耐震偽装事件の責任を問われないのか。建築確認の審査が正しくおこなわれていたら、構造計算書の偽装を見抜けたのではないか。
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