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総裁選「裏の掃除役」は誰なのだろうか?

 これら梶山や加藤潰しを「裏の掃除役」(注4)として影でやったのが野中である。そんなこんなで力をつけ「影の総理」と呼ばれるまでになるが、そんな野中も小泉政権時代の総裁選で、小泉への対抗馬として所属する派閥の藤井孝男を擁立し敗れる。するとあっさり引退を表明。いままで破滅に追い込む側であった野中には、敗者となった自分の行く末が見えたからであろうか。

 いま「掃除役」は誰がやっているのか。プチ鹿島のコラム「総裁選戦線異状あり? 読売・産経が名指しした『ふぞろいな3人の“首相周辺”』」を読むと、下村博文・西村康稔・萩生田光一が忠臣として各々頑張っているようだ。そういえば8月上旬の週刊文春にも「西村康稔官房副長官や萩生田光一幹事長代行らが竹下派議員に『冷遇されてもいいのか』などと電話をかけているそうです」(注5)とある。その西村もかつては総裁選に立候補した経験をもつ。いまでは総裁候補ではなく、「首相周辺」の人物となっているが、プチ鹿島は《あの3人は「首相周辺」だが本当の「お友達」ではないのだろう。いかに首相に気に入られるかという発想だけが源なのだろう。》と正鵠を射る。

左から、「首相周辺」の下村博文、萩生田光一、西村康稔 ©文藝春秋

 敗北すると悲惨な末路を迎えかねない総裁選だが、負けを繰り返しながら力をつけていったのが小泉純一郎である。派閥の長でもない小泉は、総裁選に出ては、「郵政民営化」「首相公選」を主張する。ヤクザが賭場で暴れて顔を売るように、最近は議場のヤジやSNSで悪目立ちして名を売る議員が多いが、小泉は総裁選を重ねながらイロモノから本命になっていったといえる。そうして三度目の挑戦で勝利することになる。

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 今回が三度目の総裁選であった石破であるが、勝ち方にこだわった安倍に対して、石破の負け方はどうであったか。

「喜劇のピエロになるより、悲劇のヒーローになるべきだった」。「加藤の乱」が失敗に終わった翌日、テレビ番組で矢野絢也(元公明党委員長で政治評論家)は、ぐだぐだになった加藤をこう腐した(注6)。安倍やその陣営の目には、石破は「喜劇のピエロ」だったに違いないが、果たして世間の目には、何であったろうか。

(注1)日本経済新聞2018年9月11日朝刊
(注2)毎日新聞2018年9月9日朝刊
(注3)https://twitter.com/haratetchan/status/1035873097541251072
(注4)魚住昭『野中広務 差別と権力』講談社文庫
(注5)週刊文春2018.8.16-23 
(注6)山崎拓『YKK秘録』講談社+α文庫