『人文知は武器になる』(山口周・深井龍之介 著)

 長らくビジネスの現場では歴史や哲学、文学といった人文科学は、役に立たないものと見なされがちだった。ところが今、AIの急速な進歩によって、社会の常識が次々と塗り替えられ、従来の成功法則も大きく揺らいでいる。先の見えない時代だからこそ、人文科学の知見が重要になると説く本書が話題。『人生の経営戦略』などの著者・山口周氏と「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」のMC・深井龍之介氏による初対談集だ。

「もともと深井さんから『人文知を広める新書を書きたい』という相談をいただいていました。その最中、山口さんが企業研修のゲストに招いた深井さんの話に感銘を受けたことを機に、本書へ発展しました」(担当編集者の東郷雄多さん)

 人文知がなぜビジネスパーソンに必須なのかを出発点に、歴史の捉え方や独学法、AI時代の世界と日本の未来を考える全6章。文明や企業はなぜ衰退するのか、成功体験はなぜ失敗を招くのかなど、歴史の知見を手がかりに、変化の時代を生き抜くヒントを探る。

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「山口さんが深井さんに問いを投げかける場面も多く、読者の疑問を代弁することで、対談ならではの読みやすさが生まれています」(東郷さん)

 発売前から著者ふたりがSNSで発信。両者のファンを中心に予約が集まり、発売前に重版が決定。発売後は口コミに加え、新聞での紹介や書評も後押しとなって読者層が広がり、版を重ねている。東郷さんいわく「発売日に電車で本書を読んでいる方を見かけ、手ごたえを感じた」のだそう。

「人文知の大切さを、学者ではなくビジネスの第一線で活躍する山口さんと深井さんが語ったことで、読者により説得力のあるものとして受け止められたのではないかと思います。タイトルに“人文知”を入れるか、最後まで迷いましたが、まだ耳慣れない言葉だからこそ、本書をきっかけに広まる可能性があると考えました。『歴史は武器になる』では、ここまでヒットしなかったかもしれません」(東郷さん)

 読者からは「本書の中で取り上げられていた本も読んでみたい」といった感想も多く寄せられているという。本書を入り口に、人文知への関心を広げてもらうという狙いは、確実に読者に届いているようだ。

​2026年4月発売。初版1万5000部。現在6刷7万8000部(電子含む)

人文知は武器になる (文春新書 1529)

山口 周 ,深井 龍之介

文藝春秋

2026年4月17日 発売