AIの進歩などによって「常識」や「正解」が変化し、パラダイム・シフトが起きつつある。そんな激動の時代を生き抜くこれからのビジネスパーソンに必要なのは、「人文科学」の知見である。

 そう指摘するのは、ベストセラー『人生の経営戦略』などの著者である山口周氏と、株式会社COTENのCEOであり、「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」MCの深井龍之介氏だ。なぜ、哲学や歴史を学ぶことが重要なのか? 

 ここでは2人の著書『人文知は武器になる』(文春新書)より一部を抜粋して、欧米と日本の教育システムの違いについての対談をお届けする。(全3回の1回目)

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未来について考えるには

山口 ヨーロッパでは、リーダーは幅広い知識を身につけておくべきだということで、帝王学として人文知を若いときから学びます。フランスのバカロレア(大学入学資格)では、文系理系問わず哲学や歴史が必須科目になっていますね。また、グランゼコールというエリート養成学校に合格するための受験参考書を翻訳した『グランゼコールの教科書 フランスのエリートが習得する最高峰の知性』(ジャン=フランソワ・ブラウンスタン、ベルナール・ファン著、木村高子ほか訳、プレジデント社)は、800ページを超える鈍器本で、内容のほぼ3分の2は歴史が占めています。

 というのも、「哲学」とか「科学」とか「文学」といった科目に分かれていても、それぞれのディシプリン(学問分野)の中には、必ず哲学史や科学史や文学史、つまり「歴史」が入ってくる。それは過去からの流れを知らなければ、いま起きていることを深く理解することはできないし、未来について考えることもできない、ということですよね。

写真はイメージ ©︎AFLO

深井 僕がよく言っているのは、社会には絶対的法則というものは存在しないんだけれども、「明らかな傾向」は存在しているということです。ひとくちに「傾向」といっても、いろんな種類があって、数か月単位で繰り返す短期的傾向から、10年単位、100年単位での傾向もある。そういう傾向みたいなものは、IQが高ければわかるというものではなくて、歴史や哲学などの人文知を学んでいないとわかりません。