AIの進歩などによって「常識」や「正解」が変化し、パラダイム・シフトが起きつつある。そんな激動の時代を生き抜くこれからのビジネスパーソンに必要なのは、「人文科学」の知見である。

 そう指摘するのは、ベストセラー『人生の経営戦略』などの著者である山口周氏と、株式会社COTENのCEOであり、「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」MCの深井龍之介氏だ。なぜ、哲学や歴史を学ぶことが重要なのか?

 ここでは『人文知は武器になる』(文春新書)より一部を抜粋して、2人が活動を通じて発見してきた“日本人のセンスの良さ”について語る対談をお届けする。(全3回の3回目/最初から読む

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©west/イメージマート

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言語化できないけれど実践できる

山口 日本社会についていろいろ批判もしてきましたけれど、深井さんやCOTENの提案が日本で広く受け入れられ、社会インフラのようになりつつあるというのは、日本人の人文知に対する親近感の高さを示しているように思います。歴史のおもしろさや、それを活かすことの大切さに多くの人が共感しているということに、日本人の素地のよさみたいなものを感じています。

深井 僕は最近、日本人の特性を調査研究しているんですけど、先ほど挙げた「嫌いな人とも一緒にいられるスキル」以外にも、「中長期的な合理性」に対するセンスのよさもあると思っています。日本人って実はめっちゃセンスいい。長い目で見て「いいね」と思うことを、言語化しない、言語化できないんだけど、判断できてしまうし、実践もできる。言語化しなくていい領域のなかで、そういう判断がばんばん簡単にできちゃう性質があるなと思っていて。ただ、経営の現場になると、そのセンスを言語化することが求められて、かえってセンスを発揮できなくなっていると感じています。

 僕が、日本の人たちに、人文知の必要性を説くときも、そういう身体感覚としての中長期的合理性に訴えると、「完全には理解できていないけれど応援するよ」という態度をとってくれます。欧米人はやっぱり言語化しないと判断もできないという側面が強いので、理解もしてないことを応援するという態度はとらないだろうと思うんです。それはすごく特殊な性質じゃないかと感じています。