ドラッカーが称賛した明治維新

深井 あと日本人って一定の確率ですごく変わった人が出てくるんですよ。

山口 アウトライヤー(集団から著しく異なる統計的な外れ値)みたいな人ですかね。日本史上の人物では誰でしょう。

深井 幕末、明治維新がまさにそうですね。西郷隆盛も大久保利通も高杉晋作も吉田松陰も、みんな世界史に類を見ないような人たちです。あの瞬間、あの立場で、あのメンタリティーの人が揃っていたというのが、奇跡だと思うんですよ。世界史上、類似事例は見たことがないです。さきほど周さんは、殿様が自ら降りたとおっしゃったけれど、厳密に言うと、その下の武士たち、下級武士も含めて、中長期的合理性に命を賭けていたということがすごかった。それを「武士道」で説明してたりするけれど、武士道とも違うと思うんですよね。

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西郷隆盛像 ©︎GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

山口 実は、ピーター・ドラッカーが、世界中の歴史を見て最も成功した社会変革の事例は日本の明治維新だと言っているんです。ドラッカーは経営学者といわれていたけど、本人は社会生態学者を名乗っていて、そういう研究をしていたわけです。

 なぜ、明治維新は成功したのか。ドラッカーは、その要因の一つに、藩ごとに教育制度や政策が異なる分権的な社会でありながら、共通項もあったことを挙げています。

 つまり、藩ごとに教育制度や政策が異なるために、倫理やリーダーシップ論などについて絶妙な多様性があった。また、制度や組織の多様性があった一方で共通項もある社会だったからこそ、近代化という共通目的のもと、多士済々が集まって分権的な試行錯誤ができたことで、世界に類を見ないような短期間での近代化を成し遂げることができたんだと。その共通目的を持てたということの背景に、中長期的合理性に対するセンスがあったという見方はできますよね。