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フェイスブック、ツイッター、グーグル……多くのテクノロジーイノベーションが実は経済成長に貢献していない訳

2020/12/28

source : ライフスタイル出版

genre : ニュース, 経済, 企業, 読書

「イノベーションの多くは本質的な意味で新しい市場を生み出しておらず、単に既存の市場の内部でお金を移転させているだけ」――そんな衝撃的な指摘が大反響を呼んでいる、独立研究者・山口周氏の新著『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』(現在、3刷3万5000部を突破)。数々のベストセラーを放ってきた山口氏が現代社会をおおう“虚妄の経済概念”を暴き、これからの働き方を指し示す特別インタビュー。

 

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ビジネスにおける価値 3つのキーワード

――これまでビジネスの分野で数多くの啓蒙書を書かれてきた山口さんが、文明史的な観点から「ビジネスの歴史的使命の終了」を宣言されたことは驚きました。

山口 社会において「安全、快適、便利」を作り出す――これが、ビジネスにおける価値の出し方の3つのキーワードです。ある意味、古来からずっと続いてきた普遍的な営みなわけですが、人々の生活を安全で快適に送れるような物質的な基盤の整備が加速したのが産業革命以降でした。素晴しい起業家たちが次々と出てきて、物質的貧困というものを世の中からなくそうと高邁な使命を掲げ、成し遂げてきた。

 日本では松下幸之助の掲げていた水道哲学のマニフェストが象徴的です。「生産者の使命」は「生活物資を無尽蔵に提供して貧を除くことだ」という宣言ですが、同様の精神をもった多くの企業が、戦後の焼け野原から、世界が「奇跡のようだ」と驚く日本の復興を成し遂げました。豊潤な生活物資の社会的供給というビジネスの使命は日本においてほぼ達成されたのです。

 

 物質的な豊かさが社会にゆきわたり多くの商品がコモディティ化するなか、たとえば家電の分野ではブランド力のある大企業でもBtoCでは営業利益率はいまや4%を切っています。つまり毎シーズンこれほど新商品が世の中に送り出されているのに、ほとんど営業利益は出てないんですね。

 世の中の不便、不安、不満をテクノロジーの力で解消していくのがビジネスの役割だとするなら、文明史的な意味においていったん終了したといっても過言ではありません。

――たしかに需要に比してモノが溢れかえり過ぎているのかもしれないですね。12月発表の報道では、コロナ禍の影響もあって日本の2020年度の実質成長率はマイナス5.6%となる見込みです。

山口 欧米の成長率も今年は軒並みマスナスになり、BRICsの成長率も下がっています。IMFはコロナパンデミックが収束すれば「世界経済は再び成長基調に戻る」と言っていますが、これはおそらく意図的なミスリーディングで、実態はコロナ以前から先進国の経済成長率は長期的に下降トレンドを示していました。