〈あらすじ〉
1977年2月8日、アメリカ・インディアナ州インディアナポリス。トニー・キリシス(ビル・スカルスガルド)は、不動産ローン会社メリディアン・モーゲージ社を、ある決意を持って訪ねていく。しかし目当ての社長M・L・ホール(アル・パチーノ)は休暇中で不在。そこで、社長の息子で重役のディック(デイカー・モンゴメリー)を人質に取って役員室に立て籠もることに。その際に使用したのが、人質の首と自分の首、そしてショットガンをワイヤーで固定し、下手に動けば自動発砲される装置“デッドマンズ・ワイヤー”だった。
さらにトニーは自ら通報、装置のせいで手出しができない地元警察やテレビクルーを引き連れ、人質とともに自宅へと移動する。そして自分の主張を電波にのせるべく、地元ラジオ局の人気DJフレッド・テンプル(コールマン・ドミンゴ)に電話をかける。
〈見どころ〉
当時、全米の世論を二分したという犯人の訴えとは何か。劇中歌を始め、70年代の空気を再現した演出も随所に。
70年代に起きた事件を映画化したどこか懐かしいクライム・スリラー
1977年に実際に起きた人質立てこもり事件を映画化。全米の注目を集めた理由は、犯人が自作した“デッドマンズ・ワイヤー”という装置だった。コロンバイン高校の銃乱射事件を描いた『エレファント』(03)でカンヌ国際映画祭パルム・ドールと監督賞を受賞した巨匠ガス・ヴァン・サント監督の最新作。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★★☆1970年代の実際の事件を70年代映画のタッチで復元しようとする試み自体はそう斬新ではないが、見ていて神経に障らない作りだ。ハイテクでも装飾的でもない旧型車なのに、ベーシックで低燃費で、乗り心地が安定している。
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斎藤綾子(作家)
★★★★☆映像の不鮮明さや街並み、犯人トニーの家の様子が当時の生活をリアルに感じさせる。ラジオDJの語りやBGM、悪辣な社長の姿でトニーに同情せずにはおれない。エンドロールの実際の映像にはトニーの怒りが苦しいほどに。
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森直人(映画評論家)
★★★★☆『狼たちの午後』の残響を抱えながら、アメリカン・ニューシネマの精神を再配置。周縁者の痛みを1970年代の質感に縫い戻す。選曲の妙が物語の鼓動を導き、どこか翳りを帯びた顔つきの社会劇として時代の歪みを照射する。
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洞口依子(女優)
★★★★☆最高!! と掛け声を上げたくなったヴァン・サント監督新作! 決して英雄譚としてではない反骨精神、ダークなユーモア、何より主演を囲む配役の秀逸さも相俟って当時の映画を観ている気分に酔いしれるほど。衣裳や音楽も好み。
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ゲスト評者
片岡一郎(活動写真弁士)★★★★☆当時のテレビの様な画質の映像を使用してリアリティを増す演出は目新しいものではないが、本作ではやや歪なタイミングで挿入される低画質映像が、観客を無責任なテレビ視聴者に変容させる効果をあげていて興味深い。
かたおかいちろう/1977年生まれ。2002年に澤登翠に入門、同年デビュー。日本を代表する活動写真弁士として国内のみならず国際的に活動中。映画『カツベン!』の実演指導や『ゆきてかへらぬ』などに弁士役で出演も。著書に『活動写真弁史 映画に魂を吹き込む人びと』がある。
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『デッドマンズ・ワイヤー』
7月17日(金)~
監督:ガス・ヴァン・サント(『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』)
2026年/米/原題:Dead Man’s Wire/105分
https://movies.kadokawa.co.jp/deadmanswire/




